第985回 ワインの諸々 103ワインが無茶安い店を見つけた

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  • 2006年5月21日(日)
料理はさておき、
ワインに関しては大変お得なお店を発見してしまいました。
有栖川公園近く、テレ朝通りに面した小さなビルの地下にあります、
「ボン ピナール」。
近辺には評判倒れの蕎麦「たじま」、
客が入っているとは思えないフレンチ「サンジュリアン」などがある
ちょっと足の便の悪い地域。
広尾からも六本木からも歩くのが大変です。

「ラトリエ ドゥ ジョエル ロブション」
の元シェフソムリエがオーナーのフレンチというと
お分かりでしょうか。
シェフはそのオーナーの奥さん。
「マノワール ダスティン」の
五十嵐シェフの下で修業されていた人のようです。
料理はビストロ系が主体、
シェフの腕のポテンシャルは感じるのですが、
今現在は試行錯誤なのか。
このままビストロ料理を続けるなら
もう少しインパクトあるものにしたほうがいいのではないか。
その方がワインもすすむと思います。

さてそのワイン。
リストでは前から言っておりますが
まずはシャンパーニュの値付けをチェックします。
ノンヴィンが6千円とかなり安いのにびっくり。
あのミスチルの櫻井氏などがプロデュースした神宮前の
「クルックキッチン」では、
シャンパーニュとスタッフは強弁していましたが、
ただのヴァン・ムスーなのか、
コルクではなく王冠式のスパークリングが6千円でした。
「かんだ」の神田氏も関わっているようですが、
ただのスパークリングロゼをシャンパーニュと偽装するというか、
シャンパーニュの定義も知らないスタッフがいる店ですから、
料理も知れています。
あっと、話を元に戻しましょう。

ノンヴィンだけではありません。
クリュッグのグランキュヴェ(これも実はノンヴィン)が
なんと1万5千円、ドンペリが1万3千円、
ボランジェのRD‘90が2万2千円と、
小売と同じか小売より安い価格であるではないですか。
グランキュヴェやドンペリは、客の無知に付け込んで
2万円台後半で出している店が多いだけにかなり良心的。
私はグランキュヴェを7千円前後で
ちゃんとした保管で購入するルートを知っていますので、
この店の値付けでも何割もの粗利があるのがわかりますが、
普通では考えられない営業姿勢。

スティルも同様です。
若いブルゴーニュなら、1級畑でも1万円前後。
7~8千円のものもありました。
特級畑でも1万円台、しかも90年代どころか80年代のワインも
2万円しないものもありますからさらに驚いたのです。

「トトキ」なんか、1級畑どころかただの村名、地方ワインでさえ
1万円を超えています。
1級や特級畑では2万、3万は当然で、
しかも2000年代の若いワインだけ。
いかに「トトキ」のワインに対する掛け率が高く儲けているか。
というよりも、銀座の新しいビルで商売することにより、
高い地代など固定費が売値を押し上げ、
客のCP感を下げているかがわかるというものです。

カウンター席以外に4人掛けテーブルが3卓と
キャパの割に厨房スタッフはシェフにあと一人。
ビストロと思っていましたが、リエットが出ずにパンにはオイル、
厨房の人手が足りないようで、なかなかアミューズも出てこず、
その後の皿出しも遅すぎるなどオペレーションの問題に、
オーナーソムリエの接客も個性があって
好き嫌いが分かれるといった問題点はありますが、
それらをマイナスに考えても
ワインの安さで再訪したいと思えた店。

今でも満席でしたが、こう書くともっと混んでしまうでしょうか。
一番の心配は、古めのワインを飲み干されたあと、
次の仕入れでも同じような値付けでがんばるかどうか。
今後も方針を変えずにやっていただければ、
場所が場所(賃料安そう)ですから、
料理も進歩すれば繁盛が続くと考えます。