第95回 ソムリエの実力・実態 その11デカンタージュでボトル真逆さま

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  • 2003年8月21日(木)
日本ソムリエ協会が認定している人だけが、
ソムリエというわけではありません。
「ソムリエ」は職務を意味するものですから、
飲食店で主にワインの仕入れや管理、サービスを担当する人は
皆ソムリエということになります。
認定を受けているから安心、認定者でないから駄目、と
単純に割り切れない事は今まで述べてきました。
結構、認定者も粗製濫造されていた時期がありましたから、
一概には言えないのです。

でも、最近はかなりの確率で
彼ら「ソムリエ」業のサービス、技量、知識に
疑問を持つ場面に出くわします。
日本中にワインが根付いたとは思えませんが、
4~5年前に起きた第3次ワインブームで、
ワイン価格の高騰と古酒の品薄、
といった結果をもたらした事は述べました。
つまり、最近出店してくる飲食店のワインは、
若いヴィンテージの値付けの高いものが主体となっております。
フランスワインもイタリアワインも最近は、
大消費国であるアメリカを意識して、
早飲みタイプの造りになってきています。
果実味と樽を利かした色の濃い、
しかし年月を経なくとも飲めるワインです。
ボルドーの1級物でも90年前後からは
そのように変身してきています。
つまり、今の若いソムリエは、新しいワインが主体であって、
あまり古いワインを扱っていません。
古いワインを扱う時に細心の注意を払う「澱」というものも
意識しないのでしょう。
早飲みですから、デカンタージュもしないで
どんどん客に注いでしまっています。

ですから、たまに若いワインの苦手な客が、
早く開かせる、または樽の香りを少しでも消す為に
デカンタージュを要求したら、戸惑ってしまうのです。
業界系の人気店「アッピア」や
鉄人の「マッサ」などで見た光景ですが、
デカンタへワインのボトルを真逆さまにして
すべて流し込んでいました。
若いといえども、若干の澱はあります。
澱が見事に撹拌されてしまったワインを客は飲んでいました。
客側も、ソムリエに任せるだけでなく、
チェックする知識が必要になってきています。