第94回 フレンチは何故事前にコースを決めなくていいのか
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- 2003年8月20日(水)
和食に限りません。
でも、フレンチ、イタリアンは完全「お任せ」だけではなく、
プリフィクスの形態をとっているところが多いはずです。
事前に、食材や料理法を公開しているところも多い。
しかし、和食の場合は、いくつかの価格を設定しているだけで、
食材を含めて料理法を前もって開示している店は稀です。
その日に仕入れられる食材がわからないとの理由です。
そして、わからないのに、
数日前までにコース価格の決定だけを迫られます。
「小室」にしても「と村」にしてもしかり。
特に「小室」は決定しなければ
店側からの「キャンセル」も辞さないといった、
強気な態度にでてきます。
歩留まりのリスクを負わない、
経営者側としては理想的な営業ですが、
もし何らかの事情で「ドタキャン」してしまったら、
補償をとられるのでしょうか、
それとも二度と店にいけないのでしょうか。
反面、フレンチやイタリアンでは、
最高値にあたる「シェフお任せ」は仕込みがあるからか、
事前の予約を必要とする店がありますが、
数種のコースを前もって決めろ、と強要してくる店は
経験していません。
食材の鮮度が違うのでしょか。
つまりかなり在庫しているので、毎日仕入れていない。
だから無駄にもならない。
でも、よくフードジャーナリストが宣伝している紹介文に、
「シェフが自ら毎日築地へ行って、食材を仕入れてくる」と
いうものがあります。お約束の文言です。
多店舗展開している名誉鉄人も、
「その日の気候なども考えて、料理を決めている」なんて
昔紹介されていましたが、
今時、真に受けて信じる人は少ないでしょう。
コース1種しかない、そして大箱なホールの営業体制で、
毎朝料理内容を変更しているはずがありません。
では、フレンチは毎朝仕入れていない、
前日の物を使いまわし出来るから、
事前にコースを決めなくても許されているかというと、
私は違うと思うのです。
事前に客に決定を迫るのは、強気の営業です。
フレンチ、イタリアンは乱立気味で、競争が激しく
そんなことを言っていられないのではないでしょうか。
反面、和食系では、居酒屋は乱立していますが、
よく考えると客単価が2万前後の店はそんなに多くはありません。
つまり、あまり競争がない。
カードの手数料を惜しむ、お金に細かい料理人が多い和食界、
歩留まりのリスクをも回避して、
利益追求にまっしぐら、といったところでしょうか。