第943回 鮨屋というより鮪専門店と考えるべき、入船 1

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  • 2006年4月5日(水)
奥沢駅徒歩わずか1分、
いかにも昔ながらの街場の寿司屋といった店構えである
「まぐろの入船」。
数年前、初競で2000万円という高値の
大間マグロを仕入れたことでも知られる有名店ですが、
私は来栖けい氏の著書「美食の王様」を読むまで
その存在を知りませんでした。
若干25歳の青年が、
「ロオジエ」など数ある有名店を押さえて
飲食店の第一位にランクした店がこの「入船」であります。
好奇心の塊である友里が直ちに突入したのは言うまでもありません。

鮨とフレンチ、イタリアンに中華など
すべての料理を一緒くたにしてランクを決めるということ自体、
まったく無意味ではないか。
大きなカテゴリーとして、
優・良・可のように分類できることはあっても、
どう比べればロオジエより入船がおいしいと比較できるのか。
鮨同士ならまだわかりますが、
これは完全に著者の「思い入れ」の強弱による
勝手なランク付けと言えるでしょう。
そのことからも、彼の本に整合性があるとは思えないのですが、
それより問題なのが鮨の中でもこの「入船」を一番に持ってきた点。
彼は色々と鮨屋を食べ歩き、最後にこの「入船」へたどり着いて、
その後は他店へ行くのはやめ、何百回も通い続けたと書いています。
しかし、この数年で鮨業界はかなり変わりました。
昔の看板のベテラン職人ではない、
若手が高質なタネを競い合う「タネ質競争」に突入し、
しかも江戸前仕事は実はワンパターンで、
季節によって微調整はあるでしょうが
簡単に取得できることがわかってしまったのです。
その日の気候に合わせてさじ加減するのは、何も鮨に限りません。
極端に言えば、家庭の主婦も出汁、味付けは
季節による体調の変化で自然に変えているはずなのです。

そんな「今浦島」の来栖けい氏が
「入船」を1番にランク付けしてしまって大丈夫なのか。
案の定、その反動はすぐ業界の大御所からありました。

<明日につづく>