友里征耶　行っていい店、わるい店

第941回　ケイズ・パッションの松嶋フェア　１

今年のミシュランの１つ星に、
日本人シェフの店が新たに２つ加わったそうです。
一人は数年前から凱旋出店として
芝や汐留にフレンチを開いていた吉野シェフ。
パリは諦めて日本に基盤を移したのかと思っていたのですが、
パリでもしっかり頑張っていたようです。
私がなぜパリを諦めたと思ったかというと、
ゴーミヨーに「ステラマリス」がはじめて掲載されてから
１年か２年後でしょうか。
出張に行ったついでに予約を入れて
知人と訪問したときの印象が無茶苦茶悪かったからなのです。
ミシュランの星に最も近い日本人シェフと
ＴＶで紹介されていましたが、
行きの機内で配られるガイド本にまで載っていたので
嫌な予感がしました。
ミールクーポンでも出しているのではないかと。
ドアを開けて入ったときの驚きは今でも忘れません。
ほとんどの客が、確か中２階にもホールがあったと思うのですが、
日本の若い女性。
ＴＶでは現地で高く評価されているとのことでしたが、
観光客専門みたいな店でした。
当然料理もおいしいはずがなく、
天麩羅みたいなフリットは特にひどかった。
利益を目指し、志を捨てたのかと思ったのですが、
また路線転換して、ヒラマツに先んじられたとはいえ
ミシュランの星に到達したのはめでたいことです。

そしてもう一人が、ニースの「ケイズ・パッション」の松嶋シェフ。
でも、まだ20台後半の若きシェフが、
星を簡単に取ってしまって人生勘違いしないのだろうか。
「東京カレンダー　５月号」では、
彼の勘違いをいくつか垣間見る記事が載っておりました。
まず、今年はじめにミシュラン本社へ呼ばれて、
ミシュランの「星の重み」についての説明をうけたそうです。
その際、
「星のために料理をしているんじゃない！」
とビシッと発言したことを自慢していました。
でも「東カレ」の誌面では、ミシュランを持った松嶋シェフの
満面笑みの写真が紹介されているんです。
ミシュランガイドもタイヤの販促の旅行ガイドだったはずですが、
星を授与してその心構えを教えるとは、
注目度は今でも抜群ですが、ミシュランも偉くなったものです。
更に松嶋シェフの絶口調は続きます。
ニースの店を改築して、設備や収容を充実させるとのこと。
広さも３倍にするとか。
「２つ星？来年獲りますよ」との大胆発言も、
ホリエモンを代表する最近の若者の怖いもの知らずのなせる業か。
そして止めは、
３年以内にバルセロナへ分店を出す計画があるとの宣言です。
未だ20台と若きシェフに、
ミシュランの星という大看板を与えてしまって
果たしてよかったのだろうか。

先月の第２週に、フォーシーズンズ丸の内で、数日間開催された
「凱旋フェア」へ私は出かけました。
連日タニマチや取り巻きからの接待攻勢があったと漏れ聞きますが、
その合間に厨房で指示し造らせた料理はどうだったか。
金曜はホールに居る知り合いのところへ挨拶にでていたそうですが、
土曜は姿も見られなかったとか。
フェアのラストナイト（最終日はランチで終わり）に
厨房に不在だとしたら、
それはあまりに尊大ではないかと友里は思ってしまうのです。

＜明日につづく＞