第932回 雑誌での発言や料理写真には細心の注意が必要

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  • 2006年3月25日(土)
またまた今日のお題も、料理店紹介雑誌の問題点を論うだけかと
お叱りを受けるかもしれません。
今日も、編集側が日常的に
いい加減にやっているということを挙げてみたいと思います。
彼らは、どうせ、宣伝、煽り記事なんだからといった
軽い気持ちで書いているのでしょうか。

古い話になりますが、
「料理王国 1月号」では
「料理人が気になる店」という特集がありました。
フレンチの浅野シェフ、浦野シェフ、古屋シェフなど、
そこそこ有名なシェフが、
ジャンルに拘らず気になる店、お勧めの店を
3店ほど挙げる特集でありました。
その中で、「レ・クリスタリーヌ」の田中シェフのコメントに、
ただの煽りではなく矛盾を強く感じたのです。

「レストランはサービス業だから
客のリクエストに出来るだけ応えなければならないが、
変えてはいけないものがある。
いい店は必ずそれを大切にしている。」
ここまではまったくおっしゃるとおり。
友里が口を挟む余地はありません。しかし次がいけません。
「だから好きな店はマスコミに出ない店が多い。
ときどき雑誌を見てでかけるが、1割も当たっていない。
誰かに連れて行ってもらうか、
噂を聞いて出かけた店のほうがリピートできる店が多い。」
おいおい、それなら、
この雑誌の特集記事(煽り特集)にでてくるな、
と私は思ったのです。
確かにフード・レストランジャーナリストや
料理評論家、業界人、有名料理人が
紹介する店にロクな店がないのは私も以前から主張してきました。
しかしそれならば、田中シェフは他の人とどこが違うのか、
他の人はどこが悪いのか。
これを明らかにしなければ説得力はないでしょう。
編集者も、雑誌の紹介記事がアテにならないといったコメントを、
そのまま掲載しているのですから、いい加減なものです。
いかに安易につくられているかがわかるというもの。

また、「東京カレンダー 2月号」では、
2006年に台頭するであろうニューオープン、
移転の店を特集していました。
あの中に、拙著であまりよく評価していない
南青山の和食「えさき」が神宮前に移転したとあったのです。
なにやら凄い和食の店のようにありますが、
そんな原価率が高くて客に満足を与える営業方針だったろうか。
果たして掲載していたコースの料理写真を見て、
昔とたいして変わっていないと再確認しました。
デザートをいれて7品の写真は、
どれも魅力を感じるものではありません。
平貝と野菜ではじまり、シマアジとヒラメの造り、鰆の柚庵焼き、
百合根まんじゅう、キンキの煮付け、
タラバ蟹のリゾットに本葛もち。
居酒屋、割烹的な食材のコース仕立ての割に、
ボリュームもかなり少なめ。
多皿がいいとは言えませんが、
最近の若い料理人の1万円和食より
かなり差をつけられたものではないでしょうか。
私が編集者なら、拘束されるような全皿開示はさせないでしょう。
かといって、掲載写真と実際の料理に差をつけるのはルール違反。
折角編集者やライターが関わって、店紹介記事を書くのですから、
彼らが率直な意見を料理人に伝えてあげればよかったのにと
私は思いました。
この料理写真やコース構成では、ちっとも読者に訴えるものがない。
つまり、根本からメニューを考え直さないと
客を満足させる事はできないのではないか、
とはっきり伝える事も雑誌社側の使命だと思うのですが、
編集者やライターはそのような前向きな考えなしに、
漠然と仕事をしているのでしょうね。