第910回 CPの意味を勘違いしないで

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  • 2006年3月3日(金)
私がときたま使う飲食店評価での「CP」という言葉。
ただのコストパフォーマンスの略ですが、
勘違いされている方がいらっしゃるようなので、
あらためて説明させていただきます。
古川修さんも1/26のコラムで誤解されているようですが、
1万円の料理が5千円の料理の倍美味しいとは
私は申しておりません。

以前から言っておりますが、
物にはそれぞれの土俵があるということ。
レクサスとカローラを
同じ土俵上で比較すること自体無駄なことであるように、
料理もただ絶対価格だけで比較するものではありません。
レクサスがカローラの6倍速いわけでもなく、
乗り心地や振動も価格に比例するとは限りません。

世にはランクとかジャンル、カテゴリーというものがあります。
居酒屋レベルの店の5千円と割烹の1万円、
そして懐石の2万円では、
使用食材や質がまったく異なりますから、
それ自体を価格だけで比較する事は無理なのです。
私が言うところの、CPが良い、悪いは、
言葉が足りなかったかもしれませんが、
同じようなジャンル、例えばビストロ同士、グランメゾン同士、
トラットリア同士、リストランテ同士、
居酒屋同士(この手にはあまり行きません)、割烹同士、懐石同士で
支払額に対する満足度の比較を述べています。
しかも同じジャンルのなかでも、支払額が同じような店で比較して、
相対的にこちらの店がCPが良い、悪いと述べているだけです。
車でいうならば、ベンツのEとアウディのA6、
BMWの5シリーズとの比較でしょうか。
ベンツのSならA8、7シリーズでの比較になります。
ここに高額料亭に値する、
マイバッハやベントレーを入れてCP比較しても意味がありません。
こんな事は常識だと思っていましたから、
5千円の料理が1万円の半分の美味しさであるはずがない、
といったご意見が出るとは夢にも思いませんでした。

1万円から1万5千円の価格帯の和食が銀座などで全盛ですが、
「分とく山」より弟子の「すゑとみ」の方が、
5千円安くてはるかに内容が充実しているのでCPがよい、
「馳走 そったく」、「あさみ」、「うち山」へ行くくらいなら、
もう少し気張れば「小十」や「龍吟」でより満足できるはず、
これがCPの違いだと申してきたのです。
しかし東京でのこれらの和食も、京都の若手の1万円台の店には、
立地のハンディもあるでしょうが
歯がたたないことは仕方ないかもしれません。