第868回 注目店、オープン時の予想とその後の検証

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  • 2006年1月20日(金)
鳴り物入りでオープンした店も、
半年、1年と経ってくるとその集客状況、
というかコンセプトの成否がわかってくるものです。
独立するときは少なくとも3ヶ月以上の運転資金を
現金で用意することが必要だといわれていますが、
それ以上の期間をかけても、
例外を除いて抜本的な改善をしないかぎり
集客情況に変化はしないということかもしれません。
今日はこの最近でオープン、移転した店で当時私が予想して、
残念ながら見通しが悪いことが当たってしまった店を
検証してみたいと思います。


さわ田
それほど集客に苦労しているとは思えませんが、
中野の頃の勢いはなくなっているでしょう。
夜だけの定時からの2回転営業は、
銀座には合わないと予想したのですが、
最近は昼営業をはじめ、逆に夜の2回転目はやめたとも聞きました。
立地の不便さが逆に食後感を良い方へ後押しするという
「メリット」がなくなった今、有名鮨屋、老舗鮨屋がひしめく銀座で
どう存在感をだして再び勢いを取り戻すことが出来るか。


ラ ソース 古賀
今さら言うまでもありませんが、
ランチ時はまだしも夜はいつ見ても悲惨な現状。
客がほとんど入っていません。
フレンチ風の味付けながら、
この価格と品揃えで昼から夜中までの通し営業
(現在は夕方2時間ほど休み)は無理だと思ったのですが、
はからずも予想は当たっているようです。
当初宣伝していた「さとなお」さん一派はどうお考えでしょうか。
彼らほどメジャーな人が
ネットなどで公に飲食店を取り上げる場合は、
そこらの食べ歩きのブログとは違い、
ただ単純に美味しいとか宣伝を垂れ流すだけではなく、
深みを出して
もう少し経営姿勢とかコンセプトを掘り下げてもらいたいものです。
クリスマスメニューも考案したようですが、
カウンターのカレー屋で
クリスマスのディナーを過ごそうと考えている客が
多いとは思えません。
コンセプトから抜本的に考え直すというか、
経営者のブレーンを一新するほどの治療が必要ではないでしょうか。

リョーリ ゲンテン
この店も厳しいでしょう。
さわ田以上に、角館という立地の不便さで下駄を履かせて
過大評価された店と料理人だっただけに、
喧騒な銀座で築地の食材を仕入れても、環境が以前と違いますから
実力がすぐわかってしまいます。
マスヒロさんのプロデュースがアテにならない典型例でありますが、
バッグ販売のゲンテンというスポンサーだけではなく、
翻弄された純朴な料理人自身が
一番の犠牲者と言えるかもしれません。

飲食店をオープンする時、
よくプロデューサーというか自称専門家や
マスヒロさんなどのアドヴァイスを得る事が多いようです。
しかし、彼らは私が言うところの味がわかるかどうか疑問の
「業界人」であります。経営の専門家であるとも思えません。
私は、値付け、雰囲気、料理の方向性などは、
業界人よりも、実際よく食べ歩いている、
数多くの自腹の食通の方(巷に多くいらっしゃいます)に
アドヴァイスを受けた方が確実ではないかと考えます。
なにしろ自腹で食べ歩いている人が、
自分で行きたいような店の意見を言うわけですから確かであります。
出資者や独立する料理人も、
そろそろこのことに気がつけばいいと思うわけです。
たとえ業界人が企画して成功したように見える店も、
一時的なものが多い。
長きにわたって続けるならば、奇を衒わず一時の儲けに奔らない、
忍耐が必要と考えます。