第845回 軽井沢へ移転して生き延びた、タムラ 2

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  • 2005年12月14日(水)
軽井沢野菜をふんだんに使用した
ヘルシーフレンチだと思っていたのですが、
それほど野菜が多くありません。
ネットで絶賛の桃のスープは、
丸ごと氷結させてくり貫いた桃に入っていて、
ミーハーで「純粋な読者」には受けるパフォーマンスですが、
肝心のスープ自体は、
クリームが強く桃自体のコクを感じませんでした。
ウニのコンソメゼリーも凡庸でした。
今時どこでも出てくる料理でありますから、
せめて特徴というか旨みを感じさせて欲しかった。

唯一、季節を感じる鮎のフリットは、
パートフィローを巻いて揚げたものでアイデアは面白く、
なんとか納得した一品でありました。
しかしその後の鱧は質に疑問。無理して季節物を用意するよりも、
未だ安くても良質なものを調理してもらいたかった。
お約束だという萩から送られた鮮魚(的鯛)に
仙台牛のシャブシャブ(わずかスライスが1枚)など
デザートまで10皿近く続きますが、
傑出した皿、印象に残った料理にまったく出会えなかったのは、
予想通りとはいえ自腹の身にはがっかり。
一言で言えば、軽めの創作フレンチ、
平均以上でも以下でもないといったところでしょうか。

しかしワインは安い。
ボトルで4~5千円からありますが、掛け率がかなり低く、
特に評価の高い72年のロマネ・コンティ
(こんな高価なもの頼む人がいるのでしょうか)が37万円弱。
89年のロマコン(市場価格は60万円前後)を225万円で出している、
ゴードン・ラムゼイのソムリエや
コンラッドの支配人が知ったら腰を抜かすことでしょう。

<結論>
軽井沢に移転して大正解。
まったく傑出した料理ではありませんが、
立地の妙と雰囲気で過大評価されて人気店になりました。
小山薫同氏など業界人は雰囲気や立地に弱すぎです。
あまりに不自然な肩入れは、田村氏と何か特別な関係があるからか、
単に味がわからないだけなのか。
使用食材が変わっても、
シェフの腕は数年で変わらない事があらためてわかりました。
カード不可と強気の営業。しかし、何十万円のワインを頼んでも、
現金を持ち合わせているような成金が
今の世にそんなに居るとは思えません。