第770回 友里征耶の問題点 6自爆的な文体が気に入らない

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  • 2005年9月30日(金)
世間に自分の主張を訴えたい場合、
普通は自分が世間の人とは違う、
優れた能力の持ち主だということをまずアピールするはずです。
宗教家などが勝手に宣伝する「奇跡」がこの最たるものですが、
グルメ業界でいうならば
「俺の味覚は常人とは比較にならない卓越したもの」
というものです。
山本益博さんは当初から自分の舌に自信を持たれています。
あの来栖けい氏も、自分は卓越した舌の持ち主だと主張しています。
客観的に証明できない、数値で表せないこの「幻の能力」、
理論的に証明できないですが
他人も違うと立証できないものであり、正に「言った者勝ち」。
謙虚さを封印すれば、
誰でも明日から「優れた味覚の持ち主」になれる証左なのですが、
結果は天のみぞ知る、というより、
彼らの薦めた店に実際行ってみた読者が、
正当な判断を下すことになると思います。

如何に自分が優れていて
一般読者と違うということを力説することによって、
自分の主張を通すというのが一般的手法なのですが、
この友里はまったく逆、
言わせていただければ「自爆戦法」を取っているのが特徴です。
友里自身、
確かに普通の方よりは外食の機会が多いかもしれないけど、
所詮素人の延長線上、味覚が卓越しているとは思っていない。
いや、かくいうマスヒロさんや来栖氏だって、
たいした味覚や判断基準を持っていない素人並だという戦法です。
本当に舌がまともなら、あんな店を絶賛するわけがない、
と思う事象を何回経験したことか。
4~5万軒外食したという犬養裕美子さんにしても、
数は少ないより多い方がいいでしょうが、
多けりゃいいってもんではない。
貴方の舌も素人並だと言っています。
年間100回近くラウンドしていても、
90はおろか100を切るのに四苦八苦しているゴルファーの如きと。
名伯楽を気取って店の宣伝をする、
雑誌や本を売らんがために
聞こえの良い「ヨイショ記事」だけを書く、
料亭系の過剰サービスの店に甘い、
実はかなりデータが古く最近の店を知らない、
などの問題点をまず解決すべきである、
味覚や舌はみーんなたいしたことない、との自爆文体が、
今までの手法とまったく違うので、
世間で違和感を持たれた事は想像するに難くありません。

両刃の剣でして、
友里自身が素人並と言っているんだから信用できるか、
との反論も理解できます。
また、今まで自分は優れていると自慢してきた人たちには、
並みの能力と言われたら面白くないでしょう。
自分を持ち上げるのではなく、
他人を引きずり下ろす友里の戦法に、
怨嗟があつまるのは当然かもしれないのです。

しかし、私はこれからも言いたいのです。
本人というか当事者が言っているので間違いないのですが、
コラムや本を出す人は、
自己顕示欲が人並み以上に強いに決まっている。
無理に「欲」を隠すな。
ソムリエにしても、実はたいした能力も経験もない人が多い。
有名人も含めて。
フランスなどへの渡仏経験を権威付けの基本にしているようですが、
それでは、「フランス人は全員素晴らしい」
ということになってしまうではないか。

所詮みな有名人ふくめて素人と大差がないといった「自爆戦法」、
なかなか世に受け入れられないようです。