第73回 鮨、天麩羅、客としての食べやすさとは

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  • 2003年7月30日(水)
握り自体の大きさや、ネタとシャリのバランスも
食べやすさに関係してくるでしょう。
でも、それは人それぞれの胃袋の大きさ、
口の大きさにも関係してきます。

ここで取り上げたいのは
鮨や天麩羅の客に出す時の「置き方」です。
よく、気の利いた鮨屋では、客が右利きか左利きかを見て、
握りの角度を変えて置くという話を聞きます。
右左で「ハ」の時のように角度をつけるというのです。
確かに右利きは右下がりに
やや角度をつけたほうが持ちやすいでしょう。
左利きの人に同じように出したら掴みにくいのも事実です。

また、鮨の場合は、お箸で食べる人と直接手で食べる人と
微妙に握り具合を変えているとも聞きます。
多分、お箸の場合がやや固く握って
崩れにくいようにしているということでしょう。
でも私にはちょっと疑問があるのです。
勿論、その握り具合がどんなものかわかりませんし、
食べ比べてみないと違いを判断できないかもしれません。
でもなぜ、手で食べる時わざわざ柔らかくするのか。
お箸と同じように固めに握っていれば、
崩れませんから問題はないではありませんか。
それなのにわざわざ違いをつけるということは、
実のところ鮨は手で食べるために柔らかめに握った方が
おいしいということではないかと思うのです。
でなければ、箸と手でわざわざ握りを調節するという
伝説が生まれるはずがありません。
鮨は箸で食べずに、手で取ったほうがよいと考える次第です。

天麩羅の海老はどうやって食べますか。
尻尾から先に食べる人は少ないのではないでしょうか。
今、日本一とも持て囃されている「みかわ」の主人は
海老の尻尾を客に向けて出してきます。
私はやはり頭の方から食べますから、
この場合、箸で方向を変え、一回転させる手間が出てくるのです。
他の有名天麩羅屋では
このような手間を感じたことがありませんから、
天才「みかわ」の主人は客の食べやすさといったことには
無頓着な人なのかもしれません。
六本木ヒルズの分店の弟子筋の人は本店と異なって、
頭側を客に向けてサービスしてくれています。

客の食べやすさを考えず海老を置くことに、
「日本一」の美学があるとは思えません。
早乙女氏には、天麩羅を1秒多く揚げすぎて
焦げ目をつけすぎないことと共に、
一考してもらいたい点であります。