第714回 ワインの諸々 66ワイン通の自慢話 1 飲んだワイン自慢

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  • 2005年7月24日(日)
第708回のコラムで、
ワイン通(自称も含む)のことに触れましたので、
これから毎日曜日、何回かにわたって
ワイン通の変な習性というか、
自慢話について述べてみたいと思います。
これは、多かれ少なかれワイン通、ワイン好きには
誰でも見られる傾向でして、この私も例外ではありません。

まずは飲んだワインの自慢話。
世にはマメというか記録魔の方がいらっしゃるようです。
私が遭遇したなかで、感心したというより呆れた人がいました。
飲んだワインをすべてPCに記録しているというのです。
レストランで、
ボトルで頼んだワインを記録しているというだけなら驚きません。
彼は、店で頼んだグラスワインはもとより、
ワインスクールでテイスティングしたワイン、
そしてその二次会で持ち込まれたワインまで
きっちりとメモしておりまして、
「去年一年で千種以上のワインを飲んだ」と自慢するのです。
おそらく、ソムリエ協会の認定試験で出るテイスティングワインまで
記録していると考えます。

ここまで極端な人は少ないとしても、
ワイン会で初めて会った人同士でもすぐに始まるのが
「飲んだワイン自慢」です。
別にグラスワインなど飲んだ数、種類を競うのではありません。
いわゆる高級ワイン、レアワイン、
オールドワインを飲んだ経験があるといったことを
自慢したがる傾向が、ワイン好きにはあります。
今までは詳しく書きませんでしたが、具体的な例を挙げると、
ブルゴーニュ好きでは、
先週取り上げたアンリ・ジャイエの赤ワイン、
白ワインならコシュ・デュリ、コント・ラフォンといった
造り手のワインを飲んだ自慢が手っ取り早い。
ブルゴーニュワインの造り手「自慢御三家」といえると思います。
それも古ければ古いほど良く、畑の格付けが高ければ高いほど、
つまり村名より1級、
それより特級の方がレアになり自慢になります。
不思議なことに、ロマネ・コンティで有名なDRC社のワインは、
成金的なイメージが付きまとうのか、
実際お金を積めばほとんどのヴィンテージ、
ほとんどの畑のワインは手に入るので
あまり自慢対象にはなりません。
(中には100本飲んだと自慢して
周りが羨ましがらず白けた場面にも稀に遭遇しますが)

ボルドーはマルゴー、ムートン、ラフィット、ペトリュスなど
有名どころがありますが、
なにせ生産本数が多いですから
新し目のワインではあまり自慢になりません。
世紀のヴィンテージといわている、
‘28のマルゴー、‘29のクリマン、’47のシュヴァル ブラン
など右岸もの、‘61の1級もの、
‘67のイケムなどが自慢の対象でしょうか。
どちらかというと、私の偏見かもしれませんが、
ボルドーよりブルゴーニュ好きが
「自称ワイン通」には多いと思います。

とにかく、ワイン会などで席を同じくすると、
あれ飲んだ、これ飲んだ、といった話で盛り上がり
また競り合うのがワイン通の実態というところでしょうか。
しかし、一般の傾向だと思うのですが、
あまりに有名なワインはその自慢対象にはならないようです。
フランスなら前述のDRC社、
イタリアではビオンディ サンティやガヤ、
カリフォルニアのハーランやスクリーミングなど
高いカルトワインなどは
あまり自慢の対象に入っていないのではないでしょうか。
自慢できるワインは、生産本数が少なく
ちょっとひねったものだと言えるかもしれません。