第631回 ランチをやめる店、やらない店が増えてきた
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- 2005年5月2日(月)
「23時間営業」、つまり1時間しか休まない、
ほとんど1日中店がオープンしているというのです。
この仰天営業戦略を
マスコミやフード・レストランジャーナリストたちが
見逃すはずがありません。
おいしいネタ記事として、当初はかなりの雑誌に露出させ、
この店のいわゆる宣伝に貢献してきました。
でも、よく考えてみて下さい。
労働基準法がありますから、1日当たり、
いや、1週間当たりのスタッフの労働時間は限定されています。
(実際厳格に適用している店は少ないようですが)
年中無休にするだけでも(定休日なし)、
ローテーションを考えて余分なスタッフを雇わなければならず
固定費が上がるのですが、
それを真の意味での年中無休にちかい23時間営業にすると、
理論的には1日で3交替のチームを組まなければなりません。
そして、週の就業時間も決まっていますから、
当然それより余分なスタッフが必要になるのです。
つまり、しっかり遵法する気がある店でしたら、
普通の店の数倍の人件費がかかってしまうのです。
営業時間を延ばすことにより、
それに比例して売上が上がれば問題ありませんが、
深夜や早朝、昼下がりもディナー時と同じように
1時間当たりの売上があがるとは思えません。
よって、経営的に成り立たせる為には、
他の経費を抑えなければならないことになり、
変動費である食材など料理のクオリティを落とすことになるか、
スタッフなどの人件費を抑えるため
人数をかなり絞らなければなりません。
少なくとも、この営業方針をとると決めた段階で、
食材の原価率をあげてCPの良い店にしよう、
サービスを充実させよう、といった方針を捨てることになりますね。
いわゆるCP、食後感の劣化です。
マスコミに露出しているわりに、
私の周りから料理自身でよい評判が耳に入らないのは
そのあたりが原因でしょう。
しかし、最近は
この店とは逆の方向性を目指す店が多くなってきたと感じます。
つまり営業時間の拡大ではなく縮小・集中です。
昼・夜の1日2回営業ではなく、
夜だけに絞った営業の店が目立ってきます。
昼の営業は、仕入れた食材の有効利用などの利点はありますが、
バイトを含めた人件費などの経費が膨らみ、
ランチ競争激化のなかで客単価も上げられず採算が悪いのでしょう。
昼営業するくらいなら、夜1本に絞り
深夜まで対応する店が新たにオープンするのが目立ちます。
ざっと思い浮かぶところでは、
「ビンゴ」、「ダルマット」、「小十」、
「かんだ」、「カーサ ヴィニタリア」、「スカレッタ」などです。
そうそうあのすっかり話題にならなくなった
「イル ムリーノ」も昼は営業していませんね。
古くは「ヒラタ」が
強気の夜営業1本ということで珍しかったと記憶していますが、
これからはこういうスタイルが多くなってくるかもしれません。
また、今までやっていた昼営業をやめた、
ちょっととやってみたが直ぐやめた、という店もあります。
「ラ ブランドゥ」、「龍吟」、「石かわ」などです。
やはり昼営業は効率的ではないと判断したのでしょう。
我々一般客としては営業時間が長くて
しかもCPの良い店があればありがたいのですが、
「いいところねだり」は難しいということでしょう。