第632回 看板を出さない店にはリスクもある

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  • 2005年5月3日(火)
第599回のコラムで私は、
「雑誌で看板を出さない店の特集記事なんかやるな」
と主張しました。
読者に、看板のない店=おいしい店、
という錯覚を与えてしまうからというのが骨子でしたが、
あるサイト(友里がレトワールに罪悪感・・・と同じ)を
見ていたら、またまた取り上げていただいておりました。
このサイトの主宰者の方は、私のコラムの読者のようです。
ここであらためて個人的に御礼申し上げます。

看板がない事をウリにしていてもいいではないか、
雑誌に取り上げられる、隠れ家的な印象を与える、
といったメリットの反面、
フリーの客を期待できないといったデメリットもあるはずだ、
とのお言葉です。
雑誌には「おいしい店」とは一言も書いていない、
客の質を維持する為
口コミ中心で集客したいという意図もあるはずだ、
とのご指摘もありました。

確かにおっしゃるとおり。
私も看板を出す、出さないはそのお店の自由であると思います。
問題にしたのはそういう店側の戦略ではなく、
雑誌の企画、編集側への注文です。
確かに誌面には「看板がない」=おいしい、
とは書かれておりません。
しかし、ではなぜ看板の有り無しという
物理的には大したことのない問題でわざわざ特集記事を組むのか。
そこには、色々な切り口で店紹介をすることによって誌面を稼ぎ
拡販したいというのが第一の理由でしょうが、
拡販するために、読者に買ってもらいたいが為に、
純粋な読者の錯覚を期待していることもあると思います。
わざわざ雑誌が特集したということは、
看板を出さなくても客が集まる、
つまり口コミだけの常連の店なんだろうと考えるのは当たり前です。
そうなると、常連が多い=おいしい店、
という方程式に純粋な読者は到達してしまうと考えます。
デメリットもあるでしょうが、
隠れ家的な意味合いで戦略的にとった看板はずし作戦に、
雑誌の編集が簡単に引っかかってしまうことを問題にしたいのです。
看板はなかったがCPは悪かった、いや良かったと、
実際の検証を加えてこそジャーナリズム
(別にこのグルメ業界にジャーナリズムを期待していませんが)
ではないでしょうか。

前にも述べましたが経験が豊富で、
自称料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちの
「ヨイショ記事」に騙されない、
しっかりした目と舌をお持ちの食通の方は限られています。
雑誌購入のほとんどのかた、マジョリティは
「料理の鉄人」や「業界人」、
「元世界一ソムリエ」などの肩書きだけで
朦朧としてしまう純粋な方たちです。
そのような純粋な方にも、しっかりした中立的な情報を与えて
啓蒙していかなければならないと思うのですが、
純粋な方が少なくなってしまっては、
雑誌をはじめ、マスヒロさん、
犬養さんなども営業が厳しくなってしまうので、
マスコミは絶対に今の方針を変えないでしょうね。