第527回 多皿コースは失敗ではないか、ジョエル・ロブション 2

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  • 2005年1月18日(火)
タイユバンから譲り受けたのでしょうか、
カリスマ造り手のレアワインが相場より安く、
また有名造り手の古酒が以前と同じような価格でありました。
決して絶対価格が安いわけではありませんが、
この手のワイン好きならば
つい無理してでも飲みたくなるストックと価格に驚きです。
よってこの店ではボルドーより
ブルゴーニュを頼む方がいいでしょう。
我々もブルゴーニュを主体に3本ほど飲んだのですが、
何の気なしにコルクを確認して唖然。
ベテランソムリエが抜栓したコルクだというのに、
3本ともソムリエナイフのスクリューが
コルクを縦に貫通していたのです。
抜栓時に一番気をつけることは、
コルクの破片が瓶内に落ちないように気を使うことです。
コルクの下面をスクリューが貫通するという事は、
その際の破片や粉がワインに落ちる危険があります。
思わずツレと顔を見合わせてしまいました。

粗探しで申し訳ないのですが、
食器やグラスは新しく揃えたとの説明でしたが、
クリストフルのカトラリー、すべて傷がかなりついていました。
これだけは中古品なのでしょうか。
料理は、前菜が8皿、魚が2皿、肉が4皿にデザートが3皿と
計17皿の正に多皿料理。
しかし、エルブジ料理とは違って、奇抜な実験的料理ではなく、
今までのロブションのスペシャリテなどを小皿にした
オーソドックスなものでした。
ただし、味のインパクトを求めすぎるからか、
ほとんどの料理が
フォアグラとトリュフに頼りすぎた調理となっており、
一品一品はおいしいのですが、
続けて味わうと飽きと胸焼けを感じてしまうようになります。

特に有名なカリフラワーのクリームに甲殻類のジュレは、
以前に増して味が強くなりすぎた、相当しつこいもの。
肉類もフォアグラ、うずら、牛肉、仔羊と
小ポーションといえども4種が登場。
他に海胆フラン、ちりめんキャベツなどまず多皿ありきで、
中身の食材を若干変更して
皿数を稼いだ元スペシャリテもありました。

ほとんどの料理が味濃くお腹にもたれるもので、
これはジャイアンツ打線のようなもの。
4番打者(スペシャリテ)ばかり揃えて17皿、
コース全体のメリハリがなく、まとまりを感じないのです。
一皿毎の完成度は高いのですが、トータルのバランスが悪く、
しかも多皿ですからしつこい味だけが印象に残って、
一皿毎のイメージが思い出されません。
オープン当初はロブションが詰めているようですが、
現場のシェフは28歳と才能はありそうな若手。
私は皿数をノーマルにして、
想像性あるスペシャリテを新たに考え出した方が良いと考えます。
エルブジもそうですが、
多皿料理では内容をそう頻繁に変更できません。
リピーターより一見客が主体になりますから、
店のレベルも向上するとは思えないのです。

かくして、コースが破格の3万5千円ですから、
それに見合うワインを飲んでしまうと
一人6万円を超えてしまいます。
これではたとえ料理内容が変わったとしても、
簡単にリピートできません。

<結論>
経営者の方針によって、
料理人の才能が左右されてしまうことを証明した典型例の店。
一皿毎はいいのだが、コンセプトの間違いからか、
トータルでは首を捻る食後感となりました。
しかし、ワゴンでサービスされる10種近くのパンは絶品。
なんとか価格を含め営業方針を変更してもらいたいものです。