第526回 多皿コースは失敗ではないか、ジョエル・ロブション 1
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- 2005年1月17日(月)
「料理店は経営者の考え方次第。
経営者によってその良し悪しが決まる」
を見事実証してくれたお店でした。
10年に渡って集客は順調だったのに赤字経営だったこともあり、
サッポロは7月末にタイユバン・ロブションの経営から撤退し、
宅配ピザ屋「ピザーラ」で有名な
フォーシーズに売却してしまいました。
料理は同じくロブションが関与するということでしたが、
閉店から3ヶ月経った11月半ばまで、
フォーシーズ社内に設置された準備室は
正確なオープン日を提示する事はしませんでした。
建屋は変わらず、
スタッフも一応全員解雇の上、必要な人を再雇用しているはずで
何故にそれほど時間が必要なのか、
その理由は経営会社が
コンセプトをまったく違ったものにしてしまったからだと考えます。
漏れ聞いた新店の営業スタイルを聞いて私は驚きました。
なんと20皿、3万5千円の1コース制にするというのです。
今までのロブション料理とはうってかわる、
正にエルブジ料理の模倣。
赤字から脱却するには、
今まででも高かった客単価を更に上げて
収益を改善する方針をとったのでしょう、
まずは「多皿料理ありき」にフォーシーズは出てきたのです。
今まででも1皿1万円近いものです。
1皿1万5千円は同じような料理で取れないので、
皿数を増やす戦略にでたと考えます。
しかし開店当初から躓きはありました。
景気付けに企画した一人100万円の究極のディナー
(西洋銀座でも企画した高価なワインとロブション料理)は
いつのまにか消滅。
いくら高額なワインを出すからといって、
それほど寛容な人が居なかったからでしょう。
西洋銀座では無事開催されたようですが、
店側からの説明では
「中越地震など諸般の事情でとりやめた」
と苦しい弁解をしたと聞きましたが、
案内状は中越地震前に出ていたでしょうか。
さてオープン直後に訪問した友里は入った瞬間、
違和感を覚えたのでした。
1階のホワイエはやたら花が目立ちます。
そして、レセプションで予約を確認後、
ウエーティングバーまで案内してくれた女性は、
太ももまで割れたタイトなチャイナドレスのようなものを着た美人。
この服装がロブション料理に必要なのでしょうか。
ウエーティングバーもドアが赤いガラス戸で中は真っ暗。
黒字のカーペットは赤い幾何学模様のようなものが書かれていて、
変なシャンデリアみたいな照明と相成って
場末のスナックを連想させます。
ホールは40席くらいでしょうか。
壁の絵画ははずされていて、額に入った鏡が飾られています。
なにやら怪しい雰囲気を感じてしまうのです。
テーブルにはナプキンのほか、
本日のコース料理の内容を記した巻物が置かれています。
しかも、直筆のロブションのサイン入りです。
ミーハーな私は思わず喜んでしまいましたが、
観光客向けの趣向でしょう。
現に「シャトーレストラン」と自称しているくらいですから、
そのセンスに疑問です。
どこかで見かけた人だなと思ったソムリエは、なんと剣持氏。
帰宅後思い出しましたが、
確かパシフィックや舞浜のホテルでソムリエをされていた方で、
現在は日本ソムリエ協会の副会長のはずです。
フォーシーズも大物のベテランを
思い切ってハントしてきたものだと感心しました。
ただし、今は料理人も若手が持て囃される時代。
鮨職人でさえ30代主人が幅を利かせている今日、
ベテランのソムリエが客の嗜好に合うのかどうかは
一種の賭けであります。
私はフォーシーズの判断は
結果的には厳しいのではないかと考えます。
この店の造り、そしてフォーシーズ経営となれば、
ワインは当然高いと誰しも想像します。
実際、ノンヴィンのシャンパーニュは1万2千円近くでかなり高い。
クリュッグのノンヴィンも3万3千円ですから破格です。
ワインリストは一冊と分厚く、
小さな文字で読みにくく、
ボルドーも結構高い値付けだったのですが、
意外にブルゴーニュが安いのには驚きました。
<明日に続く>