第498回 リストランテとは思えない、アモーレ 2

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  • 2004年12月7日(火)
その日入荷した食材から、
シェフと客が相談しながら料理を決めていく新しいスタイルの店、
とフード・レストランジャーナリストたちは紹介していましたが、
実際はどうでしょうか。

当然メニューはなく、
スタッフとのやり取りから、
直ぐこの店には限られた食材しかないことがわかります。
その日、前菜は4種、
パスタは紹介されていた手打ちはなく乾麺だけ、
肉料理はキアナ牛のTボーンの他は
豚頬肉などの煮込みしか用意していないというのです。
これではシェフと相談というよりも、
選択肢の非常に少ないプリフィクスコースのようなもの。
仕入れの無駄をなくした
「お任せスタイル」に等しいシステムといえるでしょう。
どこが、シェフと客が相談して決める新しいスタイルなのか。
フード・レストランジャーナリストの
まったくいい加減な宣伝文句に憤慨です。

しかも、テーブルでは皆同じ料理を頼まなければなりません。
テーブル中央に大皿で提供され、
各自が取り皿でシェアするスタイルは
正に「トラットリア」ではないでしょうか。
しかもフォークスタンドが用意されていないのに
ナイフ、フォークは使いまわししなければなりません。

ワインも当然リストがない。
客の好みを聞いて店側が選定する
最近大阪系で流行のスタイルですが、
好みはセパージュだけを聞こうとし、
州や造り手、醸造方法の拘りには鈍感です。
インポーターが無理して探し出してきたであろう
知られていないワインを数本持ってきますが、
スタッフは絶対に価格を言いません。
この店は料理、ワイン共に高額鮨屋と同じく
明細を開示しないのです。
客にテースティングもさせずに、
小さ目なグラスにいきなり半分くらいワインを注いできます。
イタリアでも庶民的な店でしか見られないこのサービスに唖然です。

肝心の料理ですが、大きなポーションでの調理で、
塩を利かした濃い目の味。
特にTボーンは悪くありません。
4人でお腹一杯になって、3本ワインを飲んで一人1万2千円。
明細はないですが、
結果はリーズナブルな価格で終わるのが救いです。

<結論>
店名は冗談でしょう。
料理、内装、サービスともすべて「トラットリア」。
拘りを持たない、
実は料理やワインに詳しくない業界人、中年男性に向いています。
ただし、食材の種類は少ないですが、
料理はしっかりした味付けで、
濃い目で量も含めてしっかり食べたい方には向いているでしょう。
一人当たりの客単価は1万円前後。
料理の選択肢のないトラットリアと割り切れば、
話のタネに訪れても失望しないと考えます。