第475回 ワインの諸々 その37ノンヴィンを1万円以上で出す店の時代遅れ感覚

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  • 2004年11月14日(日)
一年半前に前著を出した時から、
私は飲食店のワインの値付けについて述べてきました。
今まで、料理が旨いか旨くないか、
甘口か辛口かのスタンスの違いはありましたが
その数あるコメントのなかで、
ワインなどの値付けの問題は
ほとんど取り上げられていませんでした。

ワインは難しい特殊な飲み物だ、といった
間違った先入観があったようですが、
前にも述べたように、
ワインは、奥は深いですが
手前で誰でも充分楽しめるものと考えます。
特に、ワインというのは、
最近リリースされたものからカルトワイン、
そしてレアなカリスマ造り手のワイン、
何十年も昔の古酒に至るまで、
オークションなどでだいたい市場価格は把握できるものなのです。
一部の聞きかじりの雑誌では、
インポーターの息のかかったワイン通が
実際の市場価格の何倍もの値を
大げさにコメントする事がありますが、
それはあくまで営業上の戦略です。
雑誌や週刊誌で公開されている価格より
はるかに安く実際入手できると考えて間違いありません。

飲食店のワインの値付けで簡単にわかるのは、
ノンヴィンテージのシャンパーニュです。
ジャック・セロスという特殊な
やや高額なノンヴィンのシャンパーニュを出している
ハウスもありますが、
ほとんどのノンヴィンシャンパーニュは、
我々一般客で4千円前後、
飲食店やワインショップの仕入れ値では3千円前後が一般的です。

ですから、この3千円前後の仕入れのシャンパーニュを
店で、何円で出すか、
それによりその店の営業姿勢がわかるというものです。
自画自賛ではありませんが、
ここのところ東京の新しい店では
かなりこのノンヴィンシャンパーニュの価格が安くなってきました。
せいぜい倍の7千円を境として、
それ以下は安い店、9千円以上は高すぎと
私はコメントしているのですが、
結構最近は6千円台の値付けの店を見かけます。

意外かもしれませんが、
青柳を逃げ出した「龍吟」ではゴッセが6800円。
お酒では利益を上げないと主人は言っているようですが、
これでも結構マージンはあります。

しかし、京都からでてきた「レストラン よねむら」。
拙著を読んでいないのでしょうが、
モエ エ シャンドンという
「ドン ペリニヨン」で有名な
大手の大量生産シャンパーニュのノンヴィンを、
なんと1万2千円という値付けにしていました。
仕入の4倍はいっているでしょう。
またワインリストにヴィンテージを入れていません。
まったくワインにド素人の客を相手にしている店なのでしょう。
京都の店へ通っている客はまったくワインの相場、
いやワイン自体をあまりご存じない方が多いのか、
それとも東京の客を馬鹿にしているのかと勘ぐってしまいます。
仕入れが売値の1/4くらいだとばれているとは思っていないのか、
勉強不足を否めません。

「トトキ」も同じような値付けですが、
料理がおいしいので未だ許せます。
「よねむら」はフレンチもどき、
とてもまともな洋食とは思えない変な料理。
私の周りで食べ込んでいる人は誰も評価しておりません。
なぜに堂々と銀座に大手を振って進出できるのか、
また、あり難がって入店する客がなぜまだ居るのか、
その強気と厚顔さ、
そして雑誌で煽られて通っている客に私は驚きです。