第474回 友里征耶と客を斬る その3携帯をもって店を出たり入ったりするな

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2004年11月13日(土)
前回と同じく、ある店のシェフからの問題提起です。
いざパスタを出そうとしたら、
携帯をかけるため店の外に出ていたというもの。
料理を出すタイミングをはかろうとしても、
勝手に席をたつ客にまで
モチベーションを保たなければならないのか
という問いかけです。

確かにうっかり携帯を切り忘れて
入店してなりだして近辺に迷惑をかけたことが私にもあります。
店での待ち合わせで、遅れている人に連絡を取るため
携帯をもって店の外にでたこともあります。
料理が始まってから携帯を使用することはないので、
実際に料理の提供に迷惑をかけたことはないと思いますが、
最近の若い客を見ていますと
平然と携帯を使用し続ける人が多いのも事実のようです。

本来、おいしいもの食べたがりの客は、
シェフや料理人の仕事を邪魔せず、
最大限のポテンシャルを引き出して
おいしい料理を食べようとするものです。
多皿のコースとアラカルトの両方がある場合、
火を入れるものがあるならば、
ポーションの小さい多皿少量コースを避ける人は多い。
火の通しが難しくなるからです。
パスタの場合も、同じテーブルならば
種類をなるべく合わせる努力をする場合があります。
やはり少量では難しいからです。
以前マスヒロ氏が言っていたように、
テーブル全員が同じ皿を頼む必要はまったくありませんが、
すこしでも良い状態のものを食べてみたいと
思うのではないでしょうか。

ですから、前菜を食べ終え
そろそろパスタかと期待している時、
携帯をかけるため中座するような客は、
もともとそれほど料理に拘っているわけではないと考えます。
料理人とて人間です。
そこまでモチベーションを
維持する(実際無理でしょう)必要もなく、
やや伸びたパスタもかえって甘みがでて、
喜ばれるかもと割り切って構わないと考えます。

しかし、先日あるパーティで
知人(女性)から極端な料理人の仕打ちを聞きました。
上野毛の「あら輝」でのことですが、
トイレで3分ほど中座してしまったら、
主人が「鮨がまずくなる」と怒って
握りを捨ててしまったそうです。
しかし、代替の同じ握りはでなかったとのこと。
不可抗力のことでもあり、
同じものを握りなおして怒るならまだしも、
そのタネをすっとばしてしまう主人に
私はかなりの勘違い、性格のネジレを読みとりました。

年々客単価が高くなっているようで、
今ではオープン時の倍近くになってしまったとも
読者の方から聞きました。
「なぜ上野毛に店をだしたか」の質問に
お決まりの「金持ちが近辺に多いから」という回答は有名ですが、
彼の姿勢は当初から変わっていないのかもしれません。
「月夜の晩ばかりではない」
「盛者必衰の・・・」という
昔からの格言は、荒木氏の頭にはないようです。

それにしても小野二郎さん。
鮨は早く食え、と言い続け
自分の店で早く食べさせるのはいいですが、
まだ人生経験の少ない若手職人がこのように曲解して、
勘違い行動をとる弊害も生み出している現実を
どう考えているのでしょうか。