第461回 ワインの諸々 その35ワインをなぜお任せスタイルにする?

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  • 2004年10月31日(日)
最近ワインのオーダーに関して、
「お任せ」というシステムをとっている店が増えてきました。
古くはワインブーム最盛期のころ、一つ二つ、
レア、有名、高額なワインを
お任せでバブル紳士にだす店が東京にありました。
しかし最近このシステムをとってきた店は、
1万円前後の
しかもあまり知られていないワインを出してくるのです。
私の知っているだけでも、
「クロ ド ミャン」、「リストランテ アモーレ」、
「六覺燈」などがあります。
「六覺燈」はこのシステムを何十年だかとり続けていて、
昔はレアな有名高額ワインをだしていたとも聞きました。

しかし、ワイン好きの楽しみの一つとして、
店でワインリストを見比べるというものがあります。
どんなワインがあるのか、
自分のコレクションと比べてどうなのか、
レアな憧れのワインがあるのかどうか、
その設定価格はどうなのか、
リストを見るだけでも結構時間を潰すことができるほど
楽しみにしている人は多いはずです。
(プアなリストなら見ないでしょうが)

ところが入店すると、
「リストはなく、お客さまのお好みを聞いて、
それに合うようなワインをセレクトします」
とバシッと言われてしまうと、
楽しみの一つがなくなり寂しい思いをしてしまいます。
好みといっても、
ブルゴーニュならば造り手なのか、畑なのか、
ボルドーならセパージュの比率なのか、
村なのか右岸か左岸か、年代まで言うのか、
とパラメーターはいくつもあり、
好みを表現するのは容易ではありません。
ワインに詳しい人ほどそれは難しく感じるものです。

フルボディーかミディアムか、ボルドーかブルゴーニュ、
イタリアかフランスか、
せいぜいフランスならば産地、
イタリアならば州で指定するといったことならば
簡単にいえますが、これはワイン初心者の好みといえます。

私に限った事ではないと思うのですが、
この値付けなら安いので
思い切って絶対価格の高いワインを飲んでしまおう、
また、この店の値付けは高いから我慢して
格の低いワインにしておこう、といった決断もあるのですが、
そのような判断基準を提供してくれないのですから困ります。

バブル紳士や経費族などは昔、
ワインの知識が中途半端で個別の畑、造り手の知識がないので、
とにかくレアなもの、高いものを飲ませろ、と
お任せにしていたことはあります。
その名残のシステムだと思うのですが、
今は店側に別のアドヴァンテージをもたらしていると考えます。

私の経験ですが、
かなりワインに詳しい人でも知らないような造り手のワイン、
例えばフランスなら南仏や南西、
イタリアなら原産地呼称からはずれたワインやマイナーな州、など
インポーターが探し出してきた安い、
知られていないワインが
これら「お任せスタイル」の店には多いのです。
原価が分からないワインを、8000円とかで提供するわけでして、
これはインポーターと店側の利害が一致した
新しい商法と考えます。

ワインに拘りをもたれない方には
どのワインを頼もうが8000円前後で安心できるこのシステム、
いいとは思うのですが、拘りの客には評判が良いとは思えません。
串カツやクロ ド ミャンの
コテコテ料理には割り切って飲めるでしょうが、
「リストランテ」と銘打った店で
このシステムをとるのはいささか疑問です。