第457回 銀座の1万円台和食のなかでお勧め、小十 1

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  • 2004年10月27日(水)
銀座は料理人の憧れの地のはず。
いつかはこの地で勝負してみたいと考えている人が多い、
飲食店の激戦地のはずです。
現に交詢ビルに出店した店の中で、
銀座を最終目標に上京してきたオーナーが何人もいるようです。

しかし、私はここ数年間に出店してきた和食店に対して、
銀座の客、
特に女性客の評価は大甘なのではないかと思ってしまうのです。
キーワードは1万円和食。
1万円ぽっきりから1万数千円までのお任せコース専門で、
比較的若い主人がマスコミに頻繁に登場しています。
「馳走 そっ琢」、「銀座 あさみ」、「銀座 うち山」は
いずれも昼夜連日満席です。
ランチ時は特に女性客が多いようですが、
5千円前後の似非懐石コースの他、
1500円程度の鯛茶といった気軽な昼食、
夜も女性同士のグループが目立つ、
和食店としては今までとは異なる客構成となっている店です。

銀座では1万円で和風の料理が食べられさえすれば、
客はどんなレベルの料理でも満足するというのでしょうか。
これらの店で、造り、華であるお椀、焼き物、焚き合せといった、
店のレベルが判断できる料理に、
予約が難しい店と言われるだけの傑出したものを
私はまったく感じたことがありません。

盛り付けの可愛らしさや、
質はかなり劣るが高級食材と言われる、
例えば鮑やウニ、フグなどを使用して単純に感嘆させ、
深み・余韻のない凡庸な出汁などその技量を隠しているのです。
高級食材というアイテムだけで釣られた客といっては何ですが、
いわゆる本格志向でない和食店の
不思議な盛況に私はおおいに疑問でした。