第415回 今更ハードルを低くしても時既に遅し

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  • 2004年9月15日(水)
オープン当時の価格設定を含めた営業方針は、
オーナーもしくは経営者が練りに練って考えたもののはずです。
とりあえずこんなところでやってみよう、など
いい加減な気持ちで決めることではない、
料理店の存続の根幹をなす最重要な方針のはずです。

開店時間帯、狙う客層と客単価に合わせた料理のレベル、
料理価格と食材比率、酒類の値付けなど色々あるようですが、
これらの判断がオープン後の店の盛衰を左右することは
誰でもわかっているはずです。

しかし、それだけ重要である営業方針を
オープン後1年前後で変更してくる店があるのですが、
これはどういうことなのでしょうか。
満を持してオープンしたにもかかわらず、
当初の目論見とは違って集客が芳しくないことが理由のはずです。
つまり、営業方針を客側有利に変更してくるのは、
自ら「営業が不振です」と世間に晒しているようなもので
イメージダウンに繋がるのですが、
それでも敢行して来る店があるのは、背に腹は変えられない、
といった切羽詰った状態に追い込まれているからでしょう。

経営会社が民事再生法を申請して、
身売りというかスポンサーを探さなければならなくなった
「ソーホーズ」経営の「厲家菜」。
オープン時は、
「一日限定3組、しかも一組6名以上で夜だけの営業」
を一つのウリにしてきました。
しかし、今では昼営業をしている曜日もあるようで、
グループの最低人数も4名とハードルを下げ、
入場グループ数も3組ではなく増やしているそうです。
夜の最低価格も2万5千円ではなく
2万円を切ったものを用意してきました。
店中央に配置するホアイエの割に狭い3つの個室を
どう改造して入店グループ数の増加に対応したのかわかりませんが、
思惑と違って集客に苦労した結果、
1年経たずにハードルを思いっきり下げてしまったようです。

同じく六本木ヒルズの「ラトリエ ドゥ ジョエル ロブション」。
昼夜同じメニューで、ハーフポーションの前菜はありますが、
メインはフルポーションのみ。
観光客用のコース料理は6千円だけでした。
予約は受け付けず、物珍しさのため
入店に並んだ行列が更に行列をよんでいました。
しかし、この手のサプライズ料理店の宿命なのか、
新鮮度が落ちて行列がなくなってきたと思っていたら、
いつのまにか昼、夜のオープン時の時刻には
予約を受け付けるようになっておりました。
また、昼は2900円のコースを新設、
単品でも前菜、メインとも
ハーフとフルのポーションをほとんどの料理に設定して
頼みやすいようになっています。

店側としては、安いコース設定を設けるということは、
客単価の減少に直結し、
よって客数の拡大をしなければ売上が減少します。
つまり、客数は減少していることを自ら開陳したことになります。
ポーションをハーフ、フルと用意することは、
客側には選択肢を増やしますが、店側の負担は増大します。
ハーフを新設したと言う事は、客単価も下がる可能性があります。

人気で増長した和食店が、数あるコースをやめて
高いコース一本に絞る方向転換と対極をなすものでして、
客が減ってきた、もしくは最初から入っていなかった、
と言っているようなものなのです。

物事には「流れ」というものがあります。
今更後出しで転換しても再浮上、
もしくは初浮上ができるものなのか、
当初の方針決定が甘かったのですが、
そのつけは今後も持ち越されるかもしれません。