第416回 友里征耶のタブーに挑戦 その15六本木ヒルズの店に未来はあるのか
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- 2004年9月16日(木)
森ビル側と料理店の思惑、コンセプトの違いから
経営は難しいかもしれない、というようなことを述べました。
昨日のコラムでも、
鳴り物入りでオープンした2店の集客の厳しさを書きましたが、
六本木ヒルズにはまだまだ大変な店がいくつもあるようです。
当初の思惑として、
各店はオープン5年で投入資金を回収できると考えていたと
聞いたことがあります。
しかし、それは順調に席が満席になってのこと。
あれだけ行列をつくっていた小龍包の店など
7店を展開していた「ソーホーズ」も
資金繰りの悪化で民事再生法を申請したくらいです。
そのコンセプトに疑問のあった「けやき坂通り」の料理店は
特に厳しいのではないでしょうか。
観光客、見物客があまり期待できないはずれに位置し、
しかも高級店ですから
近辺の勤め人のランチや夜食の対象ともなりません。
給料日後の週末のランチ時という好条件の日でも、
表から確認できる「パ マル」には
2組しか客が入っていませんでした。
オープン当初は行列ができていた「竹やぶ」も
外から客の気配を感じません。
客の出入りが頻繁ではないようです。
「厲家菜」は勿論のこと、「みかわ」、「次郎」も
当初のフル回転には程遠いのではないでしょうか。
人気が出た店や有名な料理人には、
再開発ビル側から出店するよう
営業がバンバンかかると言われています。
そのため売上げ倍増と
再開発ビルのテナントになれるという見栄からか、
分店を出してくる店、料理人が後を断ちません。
入場者数などバラ色の集客予想を語られ、
高いテナント料など出店条件の厳しさも忘れてしまうほど
浮かれた心境になってしまう結果なのでしょうが、
ここは原則をしっかり考えるべきだったのではないでしょうか。
高額料理店を訪れる客は元来、
その「料理」そのものを食べに行くはずです。
新開発ビルを見に行ったついでに入るものではありません。
観光スポットにくる見物客は、
高い設定の蕎麦、高額中華、高額フレンチ、高額鮨、高額天麩羅を
食べ続ける事はないでしょう。
また、これらを食べ続ける客、リピーターに、
見物客が多い再開発ビルは必要ありません。
必然性を感じないはずです。
つまり、テナント料や保証金、内装など厳しい条件で入店しても、
高額料理店になるほど、
再開発ビルは、その固定費や回転資金を圧迫するかもしれませんが、
店側には集客でなんの効果ももたらさないのです。
せいぜい、オープン時に雑誌で大きく取り上げられ、
見栄が張れる位と考えます。
立地が悪くても、いくらでも繁盛店があるのです。
再開発ビルに入ったからといって、
当初は効果が幾分あるでしょうが、
厳しい入店条件がボディーブローとなって
徐々にきいてくるはずです。
都内の足の便のよいところで、
森ビルなどより緩い入店条件の立地は他にあると思います。
つまり、再開発ビルとその緩い条件での他の立地との賃料は、
かなり差額があるはずです。
その差額を、森ビルへ出店して森ビルの利益へまわすのではなく、
安い立地に出店して、食材やサービスを向上させるなど
客側にまわした方が、結果、客が集まり、
ひいては将来的にも繁盛するということは、
ちょっと考えれば誰でもわかると思うのですが、
見栄や絵に描いた餅的に安易な集客予想に惑わされて、
今後も再開発ビルへ出店する料理人は後を断たないようです。