第41回 森ビル内の飲食店にうまいものなし

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  • 2003年6月28日(土)
森ビル内の飲食店に限定した法則ではありません。
言い換えれば、「賃料の高いスペース(主に再開発地域など)に
ある飲食店にCPの良い料理なし」ということです。

飲食店のコストの中で大きな比重を占める要素は
主に3つでしょう。食材費、人件費、そして賃料です。
食材も高級物を使った方がおいしくなる可能性がありますし、
スタッフも多い方がサービス面でも優位です。
賃料の高い再開発地域は施設も新しくて
店構えも立派で高級感を感じさせてくれます。
でも、これらの要素は
直接料理の価格に影響を与えてしまうのです。

この3つの中でどれを優先させるべきか、または除外するべきか。
私は無理して、森ビルなど再開発地域の店に
出かける必要はないと思うのです。
よく、「客がほとんど入っていないのによく潰れないな」と
思う店が生き残っているのを見かけませんか。
たいていは、自分の所有地にあったり、
安い賃料の建屋に入っている店に見られたりする傾向です。
つまり、店の経営内容にもろに影響を及ぼすのが賃料です。
食材費や手間をかけるための人件費アップは
直接料理の味の向上に繋がる可能性がありますが、
高賃料は必ずしも味にリンクしません。

今年話題になった「六本木ヒルズ」。
多くの店が既存店の分店として出店してきましたが、
有名店ではどうでしょうか。
「みかわ」は料理人が
評判の良くなかった分店を任されていた人です。
価格も本店より高くなっています。
つまり、技量の落ちる料理人なのに値段は高くなっています。
「次郎」も本店主人の次男が握っているそうですが、
本店は主人と長男だけがつけ場に立っていたはず。
本店と同じ価格体系でも経験や技量はかなり落ちる店のはずです。
そして、「竹やぶ」。
蕎麦1枚の価格はきっちり2割、
200円恵比寿店より上がっています。
つまり、賃料や森ビルの要求する豪華内装を負担する為、
価格を上げたり技量を落としたりしているのです。
どちらもCP感に直結することです。
価格を据え置いた店でも、
食材比率を落とさなければ高賃料に対処できませんから、
CPは当然落ちるのです。

この誰でも気づく賃料問題を考えず、
ひたすら呑気に「六本木ヒルズ」内の有名店を
宣伝しまくっている料理評論家がいるのが不思議でなりません。
「森ビル」に限らず、「丸ビル」、「カレッタ汐留」も含めて
再開発地域内の飲食店にうまいものなし、は定説です。