第40回 CPが良く感じる人気店、「櫻川」(六本木)
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- 2003年6月27日(金)
「オヤジが謙虚」だということです。
「性格が悪いシェフの店にうまいものなし」という私の持論は、
性格の悪いシェフはうまい料理を造れない、
という意味ではありません。
必要以上に金儲けを意識しだす、
派手な交際や副業で本職を疎かにする、
勘違いして客に対して傲岸不遜な態度をとる、といった
悪循環に陥った料理人は、
客に「うまい料理」を提供しなくなるということなのです。
なにも客にへりくだる必要はありませんが、
驕ることはもっと必要ありません。
この店は開店当初は集客に苦労したようです。
根強いファンの支えにより今日、ブレイクしたと聞いています。
料理は1万円のコース1種のみ。
私は料理人の出身店(修行店)云々の話は
あまり参考にしないのですが、
この店は、経験した人ならすぐ、
「吉兆 東京店」の系統だと思われるはずです。
和食の生命線である出汁もインパクトある力強いものでして、
出身店の方向性と同じものです。
「と村」(赤坂)のようなマニアックなものではなく、
わかりやすいものです。
同じようなコース価格の店と比べて、
食材、質、共にお得感ある料理を提供しています。
「松下」、「とらたつま」、「小室」(神楽坂)、
「麻布かどわき」(麻布十番)などと比べると、
CPはかなり上を行っているでしょう。
ただし良いところばかりではありません。
ホールの女性スタッフはアルバイトなのでしょうか、
基本のテーブルウォッチング
(ここではカウンターウォッチングか)がなく、
声を出さないとお酒の追加などに反応がありません。
キャパと主人の調理速度がバランスできていないのでしょうか、
ふぐ刺しなどはあらかじめ皿に盛り付けて
ラップで準備していましたし、
他の白身の刺身も既に包丁をいれてありました。
カウンター店は料理人の包丁捌きを見るのも
一つの楽しみのはずです。1万円という価格からか、
口にしても切り置いた刺身の割に違和感を覚えなかったのが
幸いしていますが、今後考え直してもらいたい点だと思います。
日曜も営業、小上がりでは家族連れでもオッケー、
子供の場合は単品オーダーでも可、といった柔軟な営業姿勢と、
CPの良さを決定付ける1万円のみのコース。
巷あふれるコース専門の和食の中では、
他の評論家、フードジャーナリストお勧めの有名店も含めて、
私はCPでトップに位置する店だと思います。
今後、「より多くの人に味わってもらいたい」と
分店を出店するとか、「より良い食材でチャレンジしたい」と
値上げするとか、先人の料理人たちの勘違い行動に
走らないことを祈るだけです。
ランチ時の5000円はよりお得感があるようですが、
予約が困難ということで残念です。