第348回 友里征耶のタブーに挑戦 その4ワインが本当に鮨にあうと思っているのか

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  • 2004年6月27日(日)
最近は焼酎ブームだそうですね。
昔は学生、庶民の味方だった焼酎ですが、
今は下手な日本酒やワインより高いものまで出ているようで、
実に驚きです。
私も遅まきながら、
和食や鮨の場合は日本酒ではなく焼酎を飲むようになりました。
安めのものを頼めば、
日本酒よりコストをセーヴできるのが一番の理由ですが、
最近の日本酒はワインにもあてはまるのですが、
吟醸香(ワインでは樽香がきつくなっている)が立ちすぎるものや
あまりに濃厚で甘口な純米酒
(ワインでは真っ黒な濃すぎるもの)は、
質の高い刺身の旨みや繊細な出汁の余韻、鮨ネタの香りなどと
バッティングしてしまうと感じてきたからです。

しかし、この日本酒よりもっと邪魔になると思っているのが
ワインです。
最近はより売上げ、粗利がのびるからか、
和食屋や鮨屋でもワインが標準装備のようになってきております。
高層ビルにも入っている銀座の老舗の主人は、
ワインと鮨のマリアージュに熱心と聞いています。

でも、刺身や鮨ネタ、酢飯にワインがあうと
本気で考えているのでしょうか。
例えば白身に白ワイン。
シャルドネだ、ソーヴィニオンだと野暮は言いません。
どんなセパージュのワインでも、
塩をふる、バルサミコをかけるなど洋風にアレンジせず、
醤油やワサビで合わせたら生臭さが突出してしまうはずです。
マグロの血の香りといっても、赤ワインがベストとは思えません。

日本に昔からある、もっとも相性の良い、
伝統的造りの日本酒や焼酎をわざわざ排除して、
どうして合いにくいワインを飲みたがるのか、私には不思議です。
自国でのフレンチで、無理に料理に合わせて
日本酒を飲もうとするフランス人は居ないでしょう。
わざわざ最良の相性であるワインを放棄して、
どこの国のものだかわからないお酒を飲む無駄はしないはずです。

ワインはその地方の土壌、風土、気候に左右され、
その地方の特産物や郷土料理と一番合うとされています。
仔羊にポイヤック、煮込みにブルゴーニュ、
白トリュフにバローロといったものですが、
これはワイン愛好家の定説になっております。
そのようなワインが、日本独自の手法の料理に合うというのでは、
ワインファンが信奉しているこの「テロワール理論」と
まったく矛盾してしまうのです。

ワインを煽る鮨屋や和食の主人は、
このテロワールをどう考えているのか、
説明はできないでしょうね。

誤解を避ける意味で追加説明しますが、
和風の料理としても
ワインと合うように手を加えてだす店はあります。
前述したように、刺身にバルサミコをつけるなど工夫をすると
ワインでも生臭さを感じなくなりますが、
それでは創作料理となるはずです。
江戸前鮨と銘打っている以上、
創作系でない鮨はどう考えてもワインには合いません。
折角の旨い江戸前鮨だというのなら、
一番合うだろう酒を勧めるべきと考えます。
フレンチやイタリアンへ行って、
そこの主人が最初から日本酒や焼酎を薦めてきたら、
二度と行かないですよね。