第331回 友里征耶のタブーに挑戦 その1冷凍マグロはどこへ行った

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  • 2004年6月10日(木)
最近は鮨ブームだそうです。
特に30代の若い主人の店が目立ってきました。
私は「鮨ボーイズ」と呼んでいますが、
彼らの特徴は修行歴の短さと、お互いの情報交換による
ネタごとの新たな生産地の開拓です。
なかには鮨屋での修行歴ゼロを
ウリにしている主人もいるくらいです。

「次郎」のように、ヒラメは青森で東京へ入る鯛より上だ、と
頑なに主張を曲げない頑固なオヤジと違って、
ハマグリや穴子、コハダといった
江戸前の代表選手のようなネタを
鹿島や九州、能登にまで産地を広げているようです。
勿論流通システムの発達によって、
昔と違うレベルの鯛も使用しています。

このような数ある若手有名店、
そして銀座や赤坂、六本木といった繁華街の老舗店、
そしてホテルや再開発ビルに入店している高額店、
と請求額が街場の出前主体の店とは異なったコンセプトの鮨店は
かなりの数になってきています。

鮨ネタで値の一番張るであろう鮪ですが、
客にどうどうと「うちは冷凍を使っています」という店に
出くわしたことがありません。
最近の料理店のお約束といいましょうか、
食材の生産地を明言するのが流行ですが、
鮪に関しても「大間です」、「噴火湾ものです」
「佐渡です」と近海物=生=高額=うまい、といった
想定にたって味わう客が多いと考えます。

以前、場内に何回か入ったことがあるのですが、
走り回っている鮪は冷凍物しか目にしませんでした。
あの大量の冷凍物はどこで消費されているのでしょうか。
鮪は鮨屋以外にも和食屋でも使用されていますが、
たしかに和食屋では産地をあまり言いません。

しかし、予算1万5千円を超える高額鮨店でも、
赤身、中トロ、大トロと
その味わい、レベルに
店によってかなり差があると感じてしまうのです。
延縄の鮪を扱っていない
「F水産」の物だけが傑出しているからなのか、
実は冷凍物も紛れ込んでいるからなのか、
その舞台裏はわかりません。

元来、今の時期から夏場にかけては、
近海物は脂が落ちてうまくなくなるはず。
本鮪やミナミ鮪の冷凍物のほうが、
味が上回る場合もあるとは、二郎さんの本にも書いてありました。
多くの冷凍マグロがどのような店へ仕入れられているのか、
有名鮨店は本当に生鮪を使っているのか、
この問題を追及しているフード・レストランジャーナリスト、
料理評論家はみたことがありません。

近海物神話をただ信じ込むのは問題があるかもしれません。
ネタの情報を正確に開示し、
冷凍や生を同時に食べ比べさせてくれる店はないのでしょうか。