第33回 ドツボから逃れられるか、ラ リューン(東麻布)

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  • 2003年6月20日(金)
この店は昨年後半に開店したのですが、
集客に苦労をしているようです。
人通りの少ない場所なのですが、近所に
実力以上に評価された人気の「カメレオン」がありますから、
なにか特徴をだしてお得感を客に持たせれば
ブレイクする可能性はあるはずなのです。
マスコミのバックアップも時々あるようで、
「キノシタ」のシェフは、
事あるごとに自分のお勧めの店として推奨しています。
でも、今の経営姿勢では駄目だと思うのです。
木下氏も問題点を指摘せず
付き合いで安易に推薦しているのですからいい加減なものです。

この店の前身は「オオイシ」というフレンチで、
今の「ラ リューン」のシェフが初代の雇われシェフでした。
閉鎖した「オオイシ」をほとんど居抜きで引き継いで
オーナーシェフになったのです。
「オオイシ」時代は、やはり集客に問題がありながらも、
食材費の比率を上げ移転前の「キノシタ」の水準を
目指したのでしょうか、4千円前後の価格で、
塩の利いた充分ポーションのある
重めのしっかりした料理を出すCPの良い店でした。
しかも、サービス料はなし。
1回行けば交渉次第では「ワインの持ち込み」もオッケーで
しかもタダでした。勿論、幼児の持ち込みも了解です。
安くてしっかりした味わい、
食材も悪くなく量もあってワインもタダで持ち込める。
非常に使い勝手のある便利な店だったのですが、
なぜか初代シェフ(今のラ リューンのシェフ)が辞めてしまい、
次のシェフの腕が悪かったせいか、
その後半年で閉鎖となってしまったのです。

常連だった客は、店の再開を待ち望んでいました。
初代シェフはオーナーシェフとして戻ってきたので、
昔以上のCPを期待して出かけて行ったのですが、
ことごとく期待を裏切られて帰ることとなり、
リピート客にはならなかったのです。

オーナーとなって営利を追求し過ぎたのでしょうか。
以前の客は味、量、価格、サービスのトータルの満足度、
CPの良さに惹かれて来店していたのを勘違いしたようです。
料理は4500円と6500円の2種と値上げしています。
しかも、マスコミで取り上げられたシェフのスペシャリテは
高い方にしか設定されていません。
フロアはマダムが仕切っているのですが、
素人丸出しで料理の説明はおろかワインサービスもぎこちない。
サービス料も10%取るようになり、
食材の質も以前より落とし、量も減りました。
お腹一杯になった昔と比べて、
今は、帰宅してなにか腹に入れなければ物足りなさを感じます。
まったく凡庸な料理に様変わりしていました。

店経営においては素人だったのでしょう。
損して得とれ、と集客を第一に考えず、
まず目先の利益を考えたようです。
以前常連だった客にワインの持ち込みを認めるようですが、
店で一番安いワイン(4000円くらい)の持ち込み料を取る、
と言って怒らせました。
ホテルやグランメゾン級の料金の要求には唖然とさせられます。
ビストロ感覚の店なのですが、
勿論幼児の入店にもマダムは難色を示しました。

「オー グー ドゥ ジュール」のように、
フロアスタッフを雇って、
もと「オストラル」の一応名の売れたシェフを雇ってさえ、
サービス料を取らずより安く料理を提供して
連日満席になっている店の営業方針を参考にできないのが
「ラ リューン」の悲劇です。
一度客が遠のいて赤字が続きますと、
なかなか値下げやサービスを向上させるといった
解決策が取りにくくなります。
ドツボスパイラルに嵌った「ラ リューン」は
木下氏の特別の援護でも、浮上は難しいでしょう。

注)このように、雑誌の「人気シェフのお勧めの店」特集
  というのは、いかにいい加減なものかという
  サンプルでもあります。