第32回 押し売り商法ではないか、オストラル(銀座)
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- 2003年6月19日(木)
特に女性の支持が強い店です。
昼、夜ともに未だに連日賑わっていると聞いています。
開店早々は人気が出なかったのですが、
1年くらい経ってから、前のシェフが
前菜、メインともハーフポーションとして、
フルポーションの6掛けくらいの値段で提供し、
限られた予算の中で前菜、魚、肉と
3皿も食べられるシステムを出してきました。
今主流のプリフィクスといったコース制を取らないのに、
もともとの値付けも安かったからか、
人気ソムリエも抱えていたこともあり、
一気にブレイクしたのはもう遠い昔のことに感じてしまいます。
今はもう、その当時のシェフもソムリエも去ってしまいました。
そしてホールスタッフもほとんど変わってしまったようです。
オーナーマダムとの確執云々の噂は前から聞いていましたけど。
シェフか変わり味が落ちたとの評判に加えて、
各料理の価格も値上げたようで、
昔の貯金(評判)で客足の落ちをカバーしている現状を
理解していないのか、とんでもないサービスを
この店はとりだしました。私が名づけて「押し売りサービス」。
食前酒としてグラスシャンパーニュを頼んだのを見計らって、
メートルがキャビアの訪問販売に現れたのです。
業務用の「オシェトラ」
(キャビアの種類。大きく分けて3つのランクの真ん中)の
徳用缶を我々客の目の前にかざして、
「シャンパーニュに良く合います。
このオシェトラはいかがですか。お一人様1500円です」
と迫ってきたのです。
合理的に判断する欧米人ならば、
「今日はキャビアを食べに来たのではない」と
毅然とした態度で断ることもできるでしょうが、
見栄、とくに連れの女性の目を気にする日本人は
厳しい局面に追い込まれてしまいます。
一人前1500円という値付けも絶妙です。
シャンパーニュとキャビアの相性がよいことは周知の事実ですし、
実際現物を目の前に持ってこられては、
十中八九、店側の思惑通り
追加を頼んでしまうことになってしまいます。
例えは下品ですが、現物を目の前で見せて迫る、
風俗店での追加オーダー(お直り)の戦略に良く似ています。
かくして3000円の売り上げ増が達成されるのです。
なぜ、グラスシャンパーニュを頼んだ際、さりげなく口頭だけで、
「オシェトラをあわせられてはいかがですか」くらいに
とどめておかないのでしょうか。
オーナーマダムの飽くなき営利追及の姿が見えてしまうのは
私だけではないはずです。
元シェフが四番町の「オー グー ドゥ ジュール」の厨房から、
本家本元としてよりうまい料理をかなり安く提供しています。
サービス料も昼夜ともに取らない経営姿勢を変えないかぎり、
「オストラル」を駆逐する勢いは続くでしょう。