第292回 再び、ワインを酸化させないセーバーについて その3

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  • 2004年5月2日(日)
私は若いワインでは、酸化つまり空気に触れるのを
極端に気にする必要はないのではないかと最近考えます。
確かに1日以上たったワインを自宅ではなく、
店でお金を払って飲む気はしませんが。

シャトーなどを訪れた
ワイン好きの方しか知られていないかもしれませんが、
醸造して何ヶ月も樽熟成しているワインを見てみてください。
横に寝かした樽の腹側の上面には
ワインを注ぎ足す為に丸い穴が空いていて、
ガラスの栓がしてありますが、実は緩々です。
つまり上面ですが10何ヶ月も空気に触れっぱなしなのです。
また、発酵タンクからブレンドで樽へ移しかえる、
樽から樽へ移しかえる、などのときはポンプを使ったりもします。
昔は柄杓のようなもので上澄みをすくったりもしたようです。
当然、真空状態や窒素充填した部屋でやる行為ではありません。
空気に触れるのは当然です。
そして清澄剤を入れるときもそうですが、
瓶詰めするときもかならず空気に触れます。
つまり、ボトルになってから
空気に触れさせないように必要以上に気を使っても、
それ以前にバンバン空気に触れて
ワインは熟成してきているのです。

特に若いワインは抜栓仕立てよりも、
いくらか時間が経つ、
もしくはデカンタージュして空気に触れさせた方が
開いておいしくなるのも事実です。
空気に触れるのを避けたいワインというのは、
古めのものですから、澱は当然あります。
ボトルを逆さまにはしたくありません。

つまり何が言いたいかというと、
このサーバーは自己矛盾しているのではないか。
本当に酸化を避けたい古いワインは
逆さまにすることにより澱が舞う、瓶底に溜まるなどで
サービスが心配。
澱がない若いワインは逆に空気に触れさせ、
酸化を促進した方がおいしくなるので
これほど酸化に神経質になる必要があるのか。
特にグランヴァンなどにはこの装置は向いていないというか、
そんなポテンシャルの高いワインは、
若いうちはどんなことをしても、おいしいものではありません。

よってポテンシャルの低い、
安い、若いワインに向いている装置と考えますが、
そうなるとグランヴァン級をグラスで飲ませるワインバーという
コンセプトは意味がなくなるのです。
この考えはワインをやっている人には
たいてい受け入れられると考えますので、
第250回のコラムの発言となった次第です。

よって、ボルドー1級やブルゴーニュの特級畑、
ましてロマネ コンティなどをグラス売りするというのは、
イヴェントで確実に売り切る予想がない限り、
無理があると考えます。