第285回 ワインの諸々 その19ワイン価格を開示しないレストラン

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  • 2004年4月25日(日)
六本木の「リストランテ アモーレ」でのことです。
メニューがない店というのは今までにもありました。
「クチーナ ヒラタ」や「あら皮」も
口頭での説明で価格の明示がありません。
でもこの店は、ワインの価格を開示しないで
ボトル売りをしているのですから驚きました。
この店の私の評価は後に譲るとして、
なぜにワイン価格を開示しないのかを友里流に考えてみました。

スタッフは、客の好みのブドウ品種を聞いて
そのワインを勧めてきます。
しかしその客との応対のなかで、
生産地や造り手の嗜好を聞く訳ではないのです。
ご存知のように、イタリアだけではないですが、
ワインは品種が同じでも、生産地つまり州によって
その味わいはかわります。
そしてそれ以上に造り手の個性の影響が出てくるものなのです。

つまり、品種だけでは客の要求を満足できません。
勿論、料理にあわせたものを選ぶ事も無理です。
生産地の問い合わせをすると、数種のボトルが出てきました。
それでも不十分と考えますが、その少ない選択肢のなかで
我々は各ボトルの価格を聞いたのですが、
回答はありませんでした。
絶対価格を開示しないまでも、どのくらいの値差があるかで
選択の結果はかわるはずです。
しかしその価格差も言わず、
「こちらの方がちょっと高い」
くらいの情報提供です。

お任せスタイルと言ってしまえばそれまでですが、
やり取りから店側のワイン知識のレベルが高くないことが
すぐわかりました。
そんな人たちにお任せしてしまう不運を嘆いたのですが、
このようなサービスに満足する客層とはどんな人たちなのか。

まずはワインの味わいなど拘りがまったくない人たちでしょう。
赤と白の違いがあればいい。
そしてリストがあると
あれこれ迷うことを避けたい人にも向いています。
なるほど、メインであるカウンターには
業界系の人たちが目立ちました。

チェック時、総計から考えて、
ワイン価格がそれほど高くない事はわかったのですが、
せっかく安い価格設定にしているのに
食事中に客に不透明感をあたえるこの営業姿勢。
まともな一般客を相手にしていない、
もしくは珍しい営業姿勢、サプライズ営業での業界人、
イタリアン初心者の集客を狙っていると
友里は考えてしまうのです。
しかし、奇をてらっただけの営業が長続きしたためしはありません。
せっかくの料理を無駄にしないためにも、
営業形態をあらためてもらいたいものです。