第274回 イル ムリーノ ニューヨーク 2

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  • 2004年4月14日(水)
料理はガーリッキー、オイリー、ビッグポーションとの
前宣伝が一人歩きしていますが、
店内の匂いの割に、覚悟していたほどガーリックの量は多くはなく、
ポーションも思ったほど大きくありません。
せいぜい2人前くらいでしょうか。
スタッフの助言のとおり、
パスタ、メインともに2人で1皿ずつの計算ならば
そのほかお勧めの前菜を1皿頼んでも
食べきるのに困るような量ではありません。

可もなく不可もないパスタ群のなかで、
スペシャリテといわれるポルチーニのラビオリは
そのコスト(5400円)を考えるとお勧めできません。
ポルチーニの風味を感じないからです。
大人の顔くらいあると言われていた
「仔牛のカツレツ ミラノ風」ですが、
野菜がふりかかっていますが誰でも食することの出来る無難な味。
カップルで訪問してメインをこれにしたら、
量ではなく味で飽きてしまって食べきれないかもしれません。
この店は、カップルというより
4人以上でパスタ、メインと数種類を食べるのが
一番経済的と判断しました。
現にパスタだけは
事前に人数分シェアしてくれるサービスがあります。
無難な、はっきり言うと
ガーリック以外特徴のない味付けだからでしょうか、
すべての料理に目の前で胡椒を振り掛けてくるのには驚きました。
これもアメリカ人好みなのか。

ワインのストックは意外にありません。
なぜかスプマンテはなくノンヴィンのシャンパーニュが8500円と、
この手の造りの店にしては高くはなく、
イタリアワイン、カリフォルニアワインは
白、赤ともに6千円前後からあります。
勿論新しいワインだけですが、
これもアメリカ好みなのかもしれません。
数万円する有名ワインも
小売の2倍はしていないのもありましたが、
この店の料理にあわせるならば、
最安値に近いワインの選択で充分と考えます。

赤ワインはすべてデカンタージュする方針、と
偉そうに説明していたスタッフが手にしていたのは
「デカンタ」ではなくただの「カラフ」です。
しかも、デカンタージュの際、
形だけでも蝋燭か懐中電灯で確認する儀式もないまま、
ボトルをまっさかさまにして、
澱ごとすべてのワインをカラフへ移し変えました。
ソムリエの教育をしていない店なのでしょう。
デカンタージュする理由の一つである
澱の除去という概念が飛んでいます。
シャンパーニュ、白、赤ワインと
6~7千円のワインを人数分近く頼み、
パスタ、メインを二人で1皿の割合で頼んで
予算はざっと一人当たり2万円弱。
覚悟していたより安く
3時間あまりのニューヨーク疑似体験が経験できます。

<結論>
幼児も入店可、誕生祝のハッピバースデー、
客はタートルネックの業界人多し、と何でもあり、
そして誰にでも無難なわかりやすい味のイタリア風料理店。
ニューヨークの料理店の実力を確認したい人、
業界系の雰囲気で決めてみたい人には一回だけの訪問を勧めます。
しかし誰が言い出したのか私には疑問です。
「ニューヨークには世界最高水準のレストランが集まっている」。
本当ですか?