第186回 高いのに2回転する、銀座「小笹寿し」

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  • 2004年1月17日(土)
暖簾分けで出店してきてから10年経っていないと思いますが、
銀座の名店の一つに数えられるようになった「小笹寿し」。
有名店なので、
とりあえず、気軽にランチを試してみようと思ってはいけません。
ここは、昼夜同じ価格設定です。
知らずに飛び込むと、恥をかいて店を出ることになります。
昼は客が少ないと思いますが、夜は流行っているようです。
予約をする際、店が時刻19時半と指定してきました。
この不景気に羨ましい、
2回転営業をこなしていることが推測されます。
19時半で切り上げる1回転目の客が入るということは、
同伴カップルとして食事に利用する客が多いのでしょう。
でも、この店はホステスが同伴で入店した場合のリベート、
いわゆるキックバックを支払わないという
噂を聞いたことがあります。
それでも満席になるということは、
ここの鮨を純粋に食べたがる同伴客が居るということです。

気が早い私達が10分前にドアを開けたら、まだ満席です。
終わりそうな客が見当たりません。
どうやら、2回転目の客は、
予約より遅れていくのがルールのようです。
10席ほどのカウンター。
西麻布に昨年弟子を暖簾分けさせたので、
主人の寺嶋氏だけの店かと思ったのですが、
もう一人、同じような歳の職人さんがつけ場に居ます。
運悪く、我々はその2番手になりました。
どうやら主人の弟さんのようです。

最近の若い職人の店が評判になっているのを考えると、
鮨はとりあえず、仕入れのネタの良し悪しで決まるようです。
同じ店ならば、主人と2番手で変わりはないかというと、
私は扱う部位が違うのではないかと心配です。
常連を担当する主人は、高く請求できる彼らに
うまい部位を出したくなるはずです。
鮨屋は一見客には差別的な料理屋とも言えるのです。

確かに、締めるものは締め、煮るものは煮る、と徹底した江戸前。
「次郎」のように、ヒラメなど白身を生で出すことはありません。
仕事のし過ぎかとの意見もあるようですが、
オボロや薬味を乗せる握りもあります。

銀座の高額店価格でありますが、ネタ、仕事などを見ると、
満席になるのは仕方がないかと私は考えます。
比較的静かな店内、威圧感もなく、
ゆっくり鮨と酒を堪能できる環境で、
つまみと握りのお任せに日本酒を結構飲んで、一人2万数千円。
場所柄とこの内容では仕方ないでしょう。
最近の若い主人の店よりは高いですが、
その価格差を埋める満足感を持ちました。