第185回 ただのお座敷天麩羅だった、「春日」

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  • 2004年1月16日(金)
余り知られていないかもしれません、浅草の天麩羅屋「春日」。
以前の「東京最高のレストラン」という「ガイドブック」に、
「絶対ガイドブックに載っていない天麩羅屋」、と
いかにも名店のごとく
この評価本に紹介されていたのには笑いました。
レストランジャーナリストの犬養裕美子氏も
「一度行くとよいが、浅草にあり、高いから
一般の人には勧められない」と、
矛盾した紹介をされておりました。

高くてもおいしければ、サービスがよければ、
その価値を認めれば、一般の人でも行くはずです。
料理やサービスなどに比べて高すぎると
彼女が判断しているならば、それは良くない店な訳で、
勧めてはいけない、と私は考えます。

浅草雷門から徒歩で5分ほど、隠れ家的な一軒家が「春日」です。
小さな引き戸を開け、靴を脱いで控えの間に通され、
お茶で一息つかされるのは、「大黒屋」と同じスタイル。
浅草の天麩羅屋の定番なのでしょうか。

早くビールが飲みたいのに焦らされ、
10分ほど経って「用意が出来た」と
ようやく10名強のカウンターに案内されます。
なぜに、用意が必要なのでしょうか。
1回転の営業のはずで、
客を店に入れておいて用意ができてないとは、
不思議な言い回しです。
それなら出来るまで店を開けるな、と私は言いたい。

着席して驚いたのは「造り」と「先付け」が
既にセットされていたことです。
高額店で「造り」を既に切り置いているのはいかがなものか。
一般人に向いていないほど高い店がやるべきことではありません。
旅館の宴会料理ではないのですから。

天麩羅は定番「サイマキ」の他、
当然ながら生産地に拘った旬な食材が続きます。
種類は多く、全体に小振りで、揚げスタイルも軽いものです。
「大黒屋」のような黒いものではありません。
しかし、かき揚げご飯を食べ終わっての私の感想は、
「楽亭」や「はやし」を上回るものではないというだけでした。

食材も揚げ方も悪くはありません。
でも、傑出しているとも思えないのです。
そして灘の酒を飲んで一人3万円弱のお会計に、
覚悟していたとはいえ驚きました。
世間相場からみて、1万円以上は割高でしょう。

浅草と言う地域性から、過剰評価される傾向のようですが、
単なるCPの悪い天麩羅屋です。
この店は、
「内容の割には高すぎて、一般の人にはお勧めできない。
浅草と言う立地だけに興味があるとか、
CPの悪さを気にしない人は一回だけ行ってみても良い」と
紹介するべきものではないでしょうか。