第177回 重くて安くないがおいしい、「北島亭」

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  • 2003年12月26日(金)
四ツ谷にある小さなフレンチですが、
マスコミの評判は上々の「北島亭」。
「東京いい店うまい店」では、
「ロオジエ」の上をいく5つ星にランクされています。
四ツ谷駅から徒歩で10分、
目立たないといわれていますが、
フレンチとはイメージがかけ離れる電飾看板が出ていますので、
入居しているビルはすぐわかります。

間口の狭い入り口を入るとそこは「北島ワールド」か。
一見して、住宅街の小料理屋か居酒屋へ入ってしまったかと
錯覚してしまいます。
客の年齢層が高いのです。平均年齢は50歳くらいでしょうか。
男性客だけのグループも多く、あとはオジサン、オバサンだけ。
30代や若いカップルの姿が見えません。
しかもほとんどの男性が上着を脱いでおりました。
金額的には気軽な店ではないのですが・・・。

メニュはホワイトボードの手書きです。
前菜が10品以上で3~5千円、
メインも魚、肉を合わせて10品以上で4~6千円と
グランメゾン級の設定です。
コースはシェフお任せなのですが、
3皿で8千円、4皿で1万円、5皿で1万5千円です。
「ロオジエ」でもコースは1万6千円程度でありますから
この強気には驚きです。

満席だからでしょうか、
2人のスタッフだけでは手が回らないのか
料理の説明も片手間でストレスを感じます。
この価格設定とサービス料10%をとるにしては、大変不満です。

売れ筋はアラカルトではなく4品のコースのようです。
人気の「うにコンソメ」が含まれているので、
初訪問の客はこのコースで充分でしょう。

誰もが感じることですが、とにかく各ポーションが大きい。
どの皿もアラカルトとしても通用する量です。
注目の「うにゼリー」は確かに量もありおいしいですが、
最近何処でも似たような料理を目にします。
皮目に胡麻をつけてソテーした魚も
調理法は珍しくありませんが完成度が高い。
仔羊もボリュームがあり、しかも塩を限界まで使っていて
私の好みではありますが、毎日食べたら早死にするでしょう。
もう一つの人気料理である頬肉の煮込みは、
肉のカットや質には感心するものの、
煮詰めが私には物足りませんでした。
売れすぎで詰める暇がなかったのかな。

ワインの値付けは高くない。
無名の造り手ながら‘90年前後と古めの物を
1~1万5千円で揃えていますし、
評価の高い'82のボルドーが
現在の小売に近い価格であり良心的な設定と考えます。
しかし、グラスは貧弱、雰囲気は小料理屋、
そしてビストロ級のポーションの料理ですから
高級ワインが合うかは別問題です。

品数、量、主張のある味付け、とワインを飲むと
一人2万円は軽く超えますが、
年に数回、お腹を空かせて飛び込んで見たい店と考えます。
「ロオジエ」と比べるのに無理はありますが、
評価本でもたまには当たりがありますね。