第176回 ここでも天然鰻が食べられていない、「尾花」

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  • 2003年12月25日(木)
これだけ大箱な、観光地の団体客専門の食堂の雰囲気の店なのに、
料理評論家、フードジャーナリストに釣られた客で
いつも一杯です。
夏の繁忙期には、昼でも入りきれない客で行列が出来ています。
客は並んだ順に、羊飼いに追われる羊のように靴を脱いで、
ちゃぶ台の前に座らせられます。

着席すると、スタッフはすぐさま注文するよう迫ってきます。
鰻を焼き上げるのに30分から1時間要すると
客に我慢を要求する注意書きがあるのに、
店側がせっかちなのはいかがなものか。

暖簾やお土産の袋には、「天然」という文字がありますが、
ここの標準、つまりほとんどの客が食べている「鰻」は養殖です。
「うな重」は2300円から3種ほど。
時価として、「筏」、「中串」、「大串」というものが
メニューにあり、これらだけが「天然」です。
「天然鰻を食べたい」と希望すると、
滅多にない注文なのでしょうか、
女性スタッフが毎回厨房へ確認に行くところをみると、
天然鰻の入荷も限られているのでしょう。

「尾花」の「うな重」(養殖)の価格は
他の店と比べて高くはありません。
しかし、オーダーしてから捌いて焼き上げるという理由で、
40分近く待たせられるため、
客は「うざく」(1100円)や「うまき」(1400円)、
「香物」(500円)といった
ツマミとビールなどの酒類をとって間を持たせることになり、
結果、売上げ増に貢献させられます。
甘めの酢が気になる「うざく」は別にして、
量もたっぷりの「うまき」はお得でしょう。
ビールと「うまき」だけで許されるなら、
一人で入店した人はこれで充分です。

待たされてでてきた「うな重」は悪くはないが
どこが東京一、日本一なのか他の店との違いがわかりません。
ただの柔らかい、一般においしいと言われる店のレベルの物。
店のスタッフや近傍の客が注視する中、
出てきたこの日の天然物「大串」は、
その厚さ、長さに圧倒されます。
とても鰻にはみえない大きさの蒲焼。
皮も厚くて食感はよく、
身も「うな重」の養殖ほど柔ではありません。
焼き魚と感じるのですが、
味わい・風味に「養殖」と「天然」の違いを感じないのです。
「野田岩」の「天然」は柔らかすぎたが風味だけはありました。
食感と風味を満足させてくれる「天然鰻」は
東京には存在しないのでしょうか。

<結論>
「天然鰻」が勝手に一人歩きしている店だが、
実際天然を食べている客はほとんどいない。
しかも、食感は違うが風味や味わいから考えると
一皿13000円以上払うほどのものでもない。
勿論、普通の「鰻」も悪くはないが傑出しているとは思えない、
他の有名店のレベル。
東京一との料理評論家、フードジャーナリストのスリコミに、
読者、一般客は洗脳されてはいけません。