第108回 鮨屋のタブーに挑戦 その1なぜ明細書がでない?

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  • 2003年9月3日(水)
鮨屋はある意味、特殊な営業形態だと思います。
どちらかというと店側有利な強気な姿勢が目立ち、
しかも客側がそれを容認している傾向がみられます。
他の飲食店では許されないだろう鮨屋独特の仕来りを、
客が受け入れるのを
「粋」という言葉で納得させようとしているのが、
私には不思議でなりません。

第一に思い浮かぶのが「明細」です。
先日、知人から「六本木 次郎」で明細を要求したら
「うちではいっさい出さない」と断られたと聞きました。
お任せが2万円ですが、
それだけでは足りなくて追加をしたようですが、
どうも最終的な請求額予想を超えていたらしく、
要求したようです。
「次郎」に限らず、いわゆる「有名店」や「高額店」では
明細を出したがらないし、自ら進んで出そうとはしません。
フレンチやイタリアン、いや中華でさえ
最後のチェック時には要求しなくても明細の確認ができます。
日本料理屋においては、
手書きで総額だけをホストにそっと示してくる
不明朗な店が中にはありますが、
明細を要求すれば嫌々ながら出してくるでしょう。
問題は、客側が「鮨屋で明細を要求したり、
金額であれこれ文句を言ったりするのは粋ではない」と
勝手に自主規制して、
店側にすべて主導権を渡してしまっていることです。
法曹界の人間に雑談的にこの疑問を投げかけたところ、
彼自身も「鮨屋はそういうところだ」と
なんら法的な検討を停止した回答をしてきたのには
更に驚かされました。
なぜ、鮨屋にだけ
客はこうもへりくだらなければいけないのでしょうか。
元来、店と客はイーブンな関係のはずです。
地位の優劣があるわけではありません。
上下関係があるわけでもない。
普通の商取引で、最初の仕様と異なり追加された場合、
その明細を提示しないで請求書を送りつけて、
黙って支払ってくれるような肝要な客は、
この競争の激しい現在いないでしょう。

鮨は、もとの江戸時代、庶民の食べ物で
気楽に大工道具を肩に担ぎ、
片手でつまみながら食べられていた物のはずです。
屋台形式の、今で言うファーストフードに近い
業態ではなかったのでしょうか。
いつの間にか、金額だけではなく、
客が恐れおののきながら食べさせてもらうような、
異常な進化を遂げてしまったようです。