第990回 蕎麦屋からステップアップ狙ったのだろうが・・・、古拙

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  • 2006年5月26日(金)
神田から修善寺へ移転して蕎麦の名店になった「朴念仁」。
蕎麦は水が命と主張していたはずですが、
昨秋銀座へ新たな店を出してきました。
しかも夜のみの営業で、
蕎麦は最後の〆に出すだけのコース和食屋に変身です。
修善寺の水を追い求めた移転のはずでしたが、
何故に銀座へ舞い戻ってきたのか。
弟子が昨年銀座で「流石」という蕎麦屋を出し、
マスコミにもて囃されたのを見ての方針転換と推測しますが、
簡単に自説を曲げるのはいかがなものか。

場所は「ベットラ オチアイ」近く、
古びたビルの2階と立地も雰囲気も良くありません。
カウンターにテーブルが2卓の小さな店の割に、
扉を開けてもスタッフが見当たらない。店内に活気もありません。
連れが既に着席していたので、
一人でテーブルへ行き、自分でコートを壁に掛け、
手荷物も近くの棚に置きました。
客単価1万5千円の高額和食?でこのシステムはいかがなものか。

コースは1万2千円1本。
他に1万5千円コースもあるようですが、
蕎麦屋が出した和食ですから冒険はしたくありません。
15皿ほどの多皿料理が次々と出てきましたが、
予想通りとはいえどれ一つ傑出した料理に出くわしませんでした。
突出しの胡麻豆腐、
前菜の盛合わせも小芋、カラスミ、銀杏、牛タタキと凡庸。
鰻は塩がきつすぎでした。
お椀替わりのスッポンのつゆ蕎麦は
エンペラや肉は入っていましたが肝心の滋味を感じない。
鱚の天麩羅や鰤の塩焼きは身が薄く小さいためか火が入りすぎて
旨みを感じません。
子柱と赤貝の酢味噌和え、
ホウレン草と椎茸のお浸しなど居酒屋か団体旅館レベルの皿が続き、
軍鶏の小鍋仕立など皿数の多さだけが唯一のウリといえます。
〆にでたもり蕎麦、おろし蕎麦を食べて、
身の丈に合わせて蕎麦屋だけにしておけばよかったと感じました。
お酒の値付けはまずまずながら、
ワインは高いので頼まない方が無難です。

<結論>
所詮蕎麦屋が背伸びして客単価増を狙っただけの店。
マスコミに露出していますが、客が少ないところをみると、
賢明な読者が増えてきたということでしょう。
価格の割に食材、質、調理とまったく物足りない店です。