第982回 ワインの諸々 102店側のワインと日本酒の扱いの違い
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- 2006年5月14日(日)
鮨屋でも色々な地酒を用意しているところが見受けられますが、
昔気質の鮨屋では
日本酒は1種しか置いていないところが結構ありました。
「鮨 なかむら」、「與兵衛」など
かなりの種類の日本酒を置いています。
鮨屋の修業経験のない「鮨 なかむら」ならば、
何の拘りもなく居酒屋のように
違った味わいの酒をいくつも置くことを
一つの「ウリ」として集客に利用するのはわかります。
しかし、独特の鮨、
はっきり言えばワンパターンの味の鮨しか出さない「與兵衛」が、
なぜあれほどの種類の酒を用意するのか。
味わいが一つの鮨に、
味わいの違う日本酒がすべて合うとは思えません。
ワンパターン鮨に拘るなら、
日本酒もベストに合うと思う酒に絞るべき
(「さとなお」さんがいうところの主人のイメージのもの)
だと思うのですが、
そうすると酒類の売り上げが落ちるのでしょうか。
「次郎」や「水谷」はカモヅル1本、
他の店、たとえば「おけい」や「ととや」、「弁天山」なども
そんなに酒の酒類があったとは記憶しておりません。
鮨屋は飲み屋ではない、という思想があるのかもしれませんが、
それでは欧州系の店では
ワインは1種しか置いていないなんて店があるのかどうか。
グランメゾンではあり得ません。
前菜、メインで2100円の「ラミティエ」でも
かなりの酒類のワインがあります。
リストランテどころか、トラットリア、オステリア、
そしてピッツェリアでさえ、数種のワインをそろえている筈です。
洋食屋でも、麻十の「エドヤ」、
西麻布の「麻布食堂」といった客単価千円前後の店でも
ワインは数種置いています。
なぜ、客単価2万円の鮨屋(割烹など和食でも見かけます)で
日本酒は1種で、
洋食系は廉価な店でもワインを数種置いているのか。
「與兵衛」のようにワンパターンの味の鮨ではない店での話です。
吉兆、和久傳など料亭系でも、
グランメゾンのワインの種類ほど日本酒をそろえておらず、
どちらかというと少なめです。
日本酒は1種しかなくてもいいが、
ワインは1種だけしかないと客に奇異に思われるからと考えますが、
これはすなわち、日本酒に拘る客が
鮨屋やある種の割烹に少ない結果と言えるでしょう。
ツマミは色々要求するのに、日本酒は適当でいい。
料理に合うワイン
(くすぐったい言い方ですが「マリアージュ」)
を求める客はいますが、
頼んだ料理に合わせる日本酒を
いちいちスタッフに聞く客を見たことがありません。
日本酒は根本的に料理に合わせない、
料理と一緒に飲むものではなないということなのか、
ただ鮨好きや和食好きにその拘りがないだけなのか。
ワインも決して日本で本格的に普及しているとは思えませんが、
日本酒の本場である日本で
なぜもっと拘る持つ客や店がでてこないのか。
呑み助は塩だけで飲み続ける、
酒飲みはあまり料理やご飯を食べない、
といった変な伝説を昔聞いたことがあります。
こんな考え方が通ってしまった結果なのか。
お酒に弱いマスヒロさんたちは、
握り鮨にはお茶が一番、と強がっていますが、
私は日本酒飲みながらバンバン握りを食べています。
ツマミまで日本酒飲んで、
握りでわざわざお茶にする変な客が鮨通を気取っておりますが、
これも一種の弊害ではないでしょうか。
鮨屋も売り上げ増のため、鮨にワインと宣伝するまえに、
日本人ならまずは最もあう
「日本酒」を客に売り込むべきだと考えます。
私は鮨屋でワイン飲む客にちっとも「粋」を感じず
反対に柔軟性の無い野暮ったさを感じるのですが、
こう書いてしまうとまた読者数が減ってしまうでしょうね。