第971回 パスタを出すだけのイタリア風洋食屋、ギオットーネ 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2006年5月3日(水)
意外にも東京の店にはアラカルトがありません。
夜もコースだけの対応に驚きました。
これは戦略的な失敗だと私は思います。
日本のトップレベルのイタリアンが集中する東京で、
アラカルトなしで「イタリアンを食べ慣れた客」に対応できるのか。
グランメゾンといえる「ピンキオーリ」でさえ単品はあります。
イタリアンの競争が東京ほど激しくない京都でも
アラカルトを用意しているのに、
この暴挙は、笹島シェフの慢心としか考えられません。
安くない価格帯ですから、
コースだけの営業でクイーンアリス系や
キハチ系に押し寄せる客層を取り込めるはずが無く、
東京のイタリアン好きから早晩飽きられるということが
なぜわからないのか。

TVでは、ディナーの客ごとに
個別の「お任せコース」を考案するとのことでしたが
本当でしょうか。
眉唾です。あり得ません。
7500円か1万円のコースを選択すると、
スタッフは厨房へ行きますが、
わずか数分後に戻ってきて詳細な料理内容を客に伝達します。
こんなに早くどうして客ごとに料理が考えられるというのか。
スタッフは嫌いな食材は聞きますが、
好きな食材や料理など客の嗜好に関しては一切質問しません。
つまり、厨房の料理人へ伝わる客データは、
人数、男女構成、推定年齢、嫌いな食材だけ。
あとはせいぜいわずかな間の会話での
客のイタリアン熟練度の推定だけ。
それらだけで、数分で料理の構成ができるとは思えない。
どう考えても客に合わせて考案したというより、
あらかじめ用意していたいくつかのパターンを、
テーブル近辺の客とダブらないように配慮して
決定しているだけと読みました。
京都人のしたたかさに脱帽です。

肝心の料理ですが、
本店同様、これが本場のイタリアンと思ってはいけません。
料理は京野菜を使った盛り付けも綺麗なもの。
サーモンとフルーツとイクラを取り合わせた前菜は、
サーモンの生臭さが強調されていました。
ソーセージと小松菜のタリオリーニは悪くないですが、
和風っぽく物足りません。
メインのフォアグラと鴨は、
スクランブルエッグソースなるものがかかっていて、玉子が余計か。
この店は創作イタリアンというより、
イタリア風洋食屋といったほうが通じるかもしれません。
高い値付けのワインから安目を選んでも一人2万円を超えました。

<結論>
シェフは本場イタリアでの修業歴があるのだろうか。
まったく本場のテイストを感じません。
京都で何年も繁盛店を続けてきたのは伊達ではなく、
料理はパッと見よく、わかりやすい味付けで万人受けするもの。
学生など若い人や初心者向けですが、本物志向の食通には
まったく物足りないイタリア風洋食屋であります。