第934回 勘違い病はジバラン主宰者にまで伝染

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  • 2006年3月27日(月)
グルメライターの大御所と自認して、
店や料理人には甘く、後輩ライターには説教する大谷浩己氏。
彼が料理人たちを「セレブ」と称して、
その料理人としての生い立ち、考え方を「美談仕立て」にした
「グルメ・セレブリティーズ」は、
私には非常に読後感が悪いものでした。
どうして、料理人側にたって、無理に美談仕立てにしてしまうのか。
「美談仕立て」はTV番組の定番でして、
確実に数字(視聴率)を稼げるもののようですが、
この大谷さんの本は残念ながらその恩恵をうけることなく、
数字(販売部数)を上げられなかったようです。

しかし、他人ならまだしも、
自分の行動を「美談仕立て」で自分のHPで公表するような
厚顔無恥な感覚の人がいるとは思いませんでした、
「さとなお」さん。
3月10日から数日にわたったコラムでは、
閉店を決めたという沖縄のお気に入りの店、
「琉球料理乃山本彩香」の説得に
わざわざ本業の会社を休んで(?)行き、
店主と涙ながら話し合った経緯が書かれてありました。
宮本亜門氏も閉店を考え直すよう説得したというこのお店、
私は沖縄へ行った事がないので
そのお店自体を書く事はできませんが、
各方面から閉店を惜しまれるくらいですから名店なんでしょう。
閉店するには主人の年齢などによるモチベーション、
経営状態、家庭事情など
外部の人間にははかり知れない深刻な事情がつきものですが、
一般客や常連客として単純に閉店を惜しむ気持ちはわかります。
会社を休んで(?)説得に行くのも個人の自由でしょう。
しかし、これをお涙頂戴のような「美談仕立て」で
コラムに垂れ流す彼の感性が理解できません。
他人ではなく自分の行動を取り上げているのですから。

詳しく書けませんが
「さとなお」さんと私はそうは歳が離れていません。
同じような世代に近い。
同じ時代の教育環境、社会環境のはずです。
よってこの自分の行動を「美談仕立て」で公開して、
「自分の価値を上げようとする売名行為」を気恥ずかしく感じず、
しゃあしゃあとやれる厚顔さに驚くのです。
上昇志向の強い人によく見られる行為でして、
マスヒロさんの専売特許ですけどね。
深刻な事情に配慮せず、
店の継続を説得するのは「さとなお」さんの自由。
最終的には継続を続けるか、
やはり辞めるかは主人の自己判断だからです。
しかし、これを隠れてすることで、
「男の美学」、「矜持」というものを感じないところに、
そこらの職業ライターや職業料理評論家と同じ匂いを
「さとなお」さんに感じるのです。
涙を流しあったという「美談」により、
「純粋な読者」への好感度をアップさせ、
今後発売する本や雑誌などの販売促進に役立たせたいという色気が
衣の上からモロ見えです。
「さとなお」さんの辞書には、
「裏方」、「謙虚」、「美学」、「矜持」といった文言がなく、
オレがオレがの「自己顕示欲」、「商売」ばかりなのでしょう。

本などで沖縄の店や食材を宣伝文調で取り上げだした
「さとなお」さん。
ジバランでは、
店や料理人と馴れ合うライターたちを批判していました。
ポケットマネーを握り締めていく一般客への背信行為だと。
その主張に共感する人が多く、
今の「さとなお」さんがあると思うのですが、
勝手に「方向転換宣言」をうって、
店、料理人へのヨイショ、
店関係者との親しさ(癒着)の垂れ流しと自著の販促活動。
スタイルを変えたと開き直るだけで許されるのでしょうか。
これでは「万博反対」を訴えて
当選してから「万博賛成」に転換して批判を浴びた議員と
なんら変わりがないではないですか。

コラムでは、
店で偶然会った読者からお土産をもらったとまで自慢しています。
「さかえ」という店では、
「さとなお」と認知されていて(エッセーで取り上げたらしい)、
普段より多くのお土産を貰ったと、別格扱いをまたまた自慢。
しかしこんなことをコラムで書くものなのか。

顔が割れてオレも有名人になったと自慢したいのか、
読者よ、オレを見つけたときは土産をもってこいよ、
というメッセージなのか。
「特別待遇」すれば、エッセーや本で取り上げるぞ、
との店へのメッセージなのか。
とても「自腹」をウリにしている人の行為とは思えません。
だいたいなぜ、店で偶然会った客が「さとなお」とわかるのか。
体に「さとなお」と書いたタスキをかけているのか、
店内でオレは「さとなお」だと大きな声でしゃべっているのか。
友里はカウンターで、隣の客が料理人と
「友里談義」(悪口が多いですけど)をしているところに
何回か遭遇しています。
心無い料理人のスタッフに隠し撮りされて、
手配写真が出回っているとはいえ、
謙虚に覆面の自腹に徹していれば、
自分から名乗らなければそうはばれないものです。
そういえば未だ、
「鮨 なかむら」には再訪していないことを思い出しました。

山本益博氏、犬養裕美子氏など大御所に加えて、
一般客、一般読者にとって「有害な」大物ヨイショ宣伝ライターが
もう一人増えてしまったのは、誠に残念であります。