第889回 若い料理人を煽りすぎて勘違いさせるな
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- 2006年2月10日(金)
台頭してくる若き料理人を
嫉妬でむやみに斬りつけているのではありません。
若くて経験がないから駄目だ、とも言うつもりもありません。
鮨屋を例に挙げれば、スシの修行歴がなくても
独学と真似だけで客を呼べる事を証明したのが
「鮨 なかむら」です。
鮨はタネ質一番、能書き2番、3、4がなくて5に仕事。
10年も親方の元で勤めない、
20代の若い鮨職人がここ数年台頭してきて、
二郎さんはじめベテラン勢はかなり慌てたのではないでしょうか。
江戸前鮨は仕事、
つまり技術が一番でその習得が大変だと散々唱えて
自分たちの店に付加価値をつけてきたからです。
しかし、数年の修行、
もしくはたいした修行経験のない主人の鮨屋でも、
ブラインドで食したら違いがわからない。
タネ質はかえって若い主人の店のほうが良い。
マスヒロさんの影響なのか、
酢飯を強調した方が巷の評価は高くなる。
といったことが一般客にもわかってしまった
一種の「鮨革命」であったと思います。
中華の世界でも、若干25才、
わずか数年の修行で千のレシピを習得したと自称し、
味のわからない業界人や副業ライター絶賛の店「ウメモト」。
しかし、修行先である「シェフス」のマダムは、
元弟子の店の紹介をしないそうです。円満退社ではないのでしょう。
彼はまた、親方譲りの営業方針をとっていることで有名です。
ずばり、「雑誌に写真はオッケー、連絡先は駄目」という
読者の好奇心を巧みに付いた集客戦略であります。
住所や電話番号掲載を拒否して、
なぜ店名や料理の取材を受けるのか。
目立ちたくないなら、一見客お断りなら、
取材を丸ごと拒否すればいいのです。
しかし、若手鮨職人や中華料理人を
何か時代の寵児のごとく褒め囃すフード・副業ライター、
ジャーナリストが多すぎです。
この若さで何か極めてしまったようなベタ褒め、
今後の飛躍が更に楽しみだというヨイショが後を絶ちませんが、
これほど持ち上げてしまって
彼らのためになると思っているのでしょうか。
あの人生経験豊富な「みかわ」の早乙女氏、
「次郎」の小野氏でさえ、
「天才」と持ち上げられてその気になったのか、
勘違い発言や行動は枚挙に暇がありません。
人間は弱いものです。初心は忘れやすいものです。
老練な職人をはじめ、
「さとなお」さん、来栖王様など業界に取り込まれて
以前のスタンスを踏み外してしまった人は
数え切れないことでしょう。
まして、まだまだ若い料理人たち。
あまりに早い成功に到達して、次に何を目指すと言うのか。
デュカスという手本があるから、
実業家を目指して多店舗展開するしか他に道はないと思うのですが、
スキルは落ち、クオリティが下がるのは必定。
むやみなマスコミのベタ褒めは、
慎まなければならないのではないでしょうか。
結果論ですが、占い師とホリエモンの問題もありました。
率が稼げるから取り上げる、雑誌が売れるからヨイショを連発する、
といった営業第一、反ジャーナリスティックなマスコミの病は、
かなり奥深く浸透してしまっているようです。