第860回 純粋な読者限定本、東京ハッピー・レストラン 3カード手数料でなぜ店の肩を持つ?

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  • 2005年12月29日(木)
今回も犬養さんが、実は彼女の最大の支持層である
「純粋な読者」ではなく「料理人」、
「店側」しか見ていないという例を挙げてみます。
巻末に、たいした裏話でもないのに、
「じつはこんな『裏』があるのです。レストランの経済学」
というものがあります。
私が以前示した、賃料などの具体的な数字による分析などではなく、
単なる料理価格とサービス料の足し算しかしていない
幼稚な主張もひどいもんですが、
その後半に「カード手数料」について、
手数料は店側の負担になるので
楽しませてもらった店には気持ちよく現金で支払いたい、
小さなマダムの店では月の手数料「15万円」が
かなりの負担になり
その額を「手伝い」にまわせばもっとサービスが行き届く、
と訴えております。

何を考えているのか。
カード手数料率5%と仮定すると、
月15万の手数料をカード会社に払うということは、
カード支払いだけで300万円の売上があるということです。
つまり、年商3600万円。
現金支払いもありますから、
4~5千万円は超えているのではないでしょうか。
この規模は、ちっとも「小さな店」ではないと考えます。

しかし、こんな「揚げ足取り」を私は言いたいのではありません。
私は犬養さんとぼやく店側に、大声で言いたい。
「手数料払うのが嫌なら、カード会社との契約を破棄しろ」と。

何も飲食店は絶対カード使用可としなければいけないという
法律があるわけではなく、その選択は店の自由です。
現に、「次郎」はじめ強気の営業している店は
カード使用不可であります。あの「タムラ」もそうですね。
「手伝い」を雇ってサービス向上したいなら、
すぐさまカード不可の店にして手伝いを雇え!

ではなぜそうしないのか。
それは「売上」が落ちる可能性を心配しているからです。
物事には必ず「裏」と「表」がありまして、
カードは一方的にカード会社だけが儲けて
店側が損するものではないのです。
そんなシステムなら、資本主義では成り立たない。
現金を持ち合わせていなくて食事が食べられなかった不便から、
初めてカードというシステムを考え出したのは
「ダイナース」と聞きました。
客側の便利さから発したビジネスシステムではありますが、
その客側の便利さが「集客」へ結びつくという
店側のメリットがあります。
また、法人カードの普及により、
いわゆる「掛け」というものが少なくなりました。
カードをきった瞬間、手数料は数%引かれますが、
直ぐにカード会社に対する店側の受け取り債権となって、
支払いは保障されるわけです。
「掛け」にした会社や個人客がつぶれたりして
支払い不可能になるリスクを回避できるわけです。
カード会社がつぶれる可能性はかなり低いですからね。
また、現金の保管、移動と言うリスクもなくなります。
「集客」と「リスク回避」、
これが店側のカードシステム導入の「メリット」だと考えます。
どこの資本主義の世に、
負担ばっかりで何のメリットももたらさないシステムを導入する
世間知らずな「店」が居るでしょうか。

ジャーナリストを名乗る割に、
まったく検証なく表面だけをとらえて
「純粋な読者」を間違って啓蒙しようとしている犬養さん。
最高学府を出られた方の思考とはとても思えません。

現に、いままでカード不可の店でも時勢に逆らえず、
集客も考えてカードシステムを導入する店が増えてきています。
また蒸し返すといわれるかもしれませんが、
あの手数料を客へ転嫁していた麻布十番の和食屋。
再三のカード会社の要請にも、
客への転嫁をやめるのに抵抗していましたが、
カード会社から契約を破棄するとの「最後通告」に、
ついに折れたのは拙著でも書いたとおりであります。
つまり、それほど「カード使用可」は
店側にとってもあり難い看板であるという証左なのです。
何がジャーナリストなのか。
犬養さんがただの「店宣伝屋」といわれる所以が
ここにあると思います。

カードを取り扱いしているがなるべく使ってくれるなという店、
もしくは導入しない店は、
手数料を払いたくないからが一番の理由でしょうが、
ある事をしている店では別の理由で、
カード使用が都合悪い場合があります。
それはカードの使用が、
当局による売上の完全把握につながるからです。
俗に言う「裏帳簿」による「売上除外」が出来なくなります。
カードを導入していない店、カードを使用するのを好まない店が、
すべて売上除外をしていると言っているわけではありません。
あくまで、一部のよからぬ店という話であります。