第839回 ランチで価格と質を下げると墓穴を掘らないか
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- 2005年12月8日(木)
最近ランチで
より安い設定のコースを出す有名店を目にする事があります。
あの恵比寿の「レトワール」は、
春先にパスタコースを設定してきたそうです。
フレンチでパスタをメインにするのは
あまり聞いた事がありませんが、千円チョイのパスタコースのお陰で
昼の客層が変わってしまったとか。
西麻布の「ダノイ」ですが、
このところマスコミに取り上げられる機会がまったくないようです。
昔は一世を風靡した人気店でありましたが、
マスコミというのは移り気なものです。
この店のランチは、前菜、パスタ、メインと
それぞれ単品だけでも、組み合わせても頼めるシステムで、
量は少ないですが押さえるなら
2千円かからずにランチが食べられました。
しかし、この店もパスタコースとして
1千円のコースを設定してきたのを最近知りました。
いずれも、集客が順調で連日満席ならば、
わざわざ安いコースを設定するはずがありません。
売上が減少する可能性があるからです。
つまり、誰でもすぐわかることですが、
安いコースを出してくるという事は、
その事によって新しい客層を取り込みたいとの店の思惑であり、
つまるところ客が入っていない、苦しいということを
自ら開陳することになるのです。
誰でもそうだと思いますが、
流行っていない店に行きたいと思う人は少ないでしょう。
隠れ家で宣伝していない店ならいいですが、
どちらも一時はマスコミにて宣伝されていた店です。
安いランチの登場は、自ら不振をPRして
イメージダウンさせてしまっているようなもので、
先を考えたら得策ではないでしょう。
私は価格を安くするという「墓穴堀り」よりも、
他にすることがあるのではないかと考えます。
九段にある「トルッキオ」は、
数多い手打ちパスタで知られています。
周りに同じような店が少ないという立地もあるでしょうが、
一人2千円は行くであろう強気の価格設定ですが、
かなり客が昼でも入っております。
肝心の味はそれほど傑出したものではないですが、
パスタの種類もあり、仕方ないかといった微妙な価格設定。
この辺にヒントがあるのではないでしょうか。
ダノイも昔はキャベツとアンチョビのスパ、
ローズマリーの地鶏というウリがありましたが、
10年以上たっても次にこれといった目玉がありません。
ランチのメニューにも目を奪われるのがないわけでして、
価格よりもメニュー、コンセプト、最終的には料理人を替える
などの対処が必要なのではないかと考えます。
ランチにフレンチは難しい。
どうしても重めのイメージがありますので、
グランメゾンで今日はゆっくり、といった人でないと
なかなか足が向きません。
割と廉価な店で、更に質を落としたランチでは、
もともと無理があるのではないでしょうか。
ビストロ ド ラ シテはある時期不振だったようですが、
料理人を替え、ランチでも夜の料理を出すような工夫をしたようで
最近は盛り返してきました。
質を落とさず、価格だけ落とすのが理想ですがそれは難しい。
しかし、鮨では「水谷」や「かねさか」などでも
昼夜質がほとんど変わらないであろう営業をして
流行っている店があるのも事実です。
安易に安いコースをひねり出すのではなく、
ランチでも質を落とさない営業を目指す、
それができないなら夜だけの営業に絞る、
といった決断が必要ではないでしょうか。
中途半端なものは受けないでしょう。
安さだけをウリにするくらいなら、
昼食はB級店に任せておけばいいのです。