第822回 あの店は今・・・ 幸村 1

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  • 2005年11月21日(月)
相変わらず予約が取りにくいと言われている
六本木ヒルズ近くの「幸村」。
カード手数料問題で主人とやりあった後のその年末に訪問してから、
私は今夏3年ぶりに訪問する機会を得ました。

最近はより常連重視でサロン化してしまったとの話。
一見は
ますます予約を入れられなくなり訪問しづらくなったようですが、
果たしてその日もかなりのお年を召した夫婦や中年男性接待客など
雰囲気は居酒屋に近いものがありました。
毎週のように通っている夫婦もいたとか。
極端な常連重視は、客は居心地の良さを感じるものですが、
店側、特に料理人も信奉者である客に囲まれて、
「いつ来てもおいしい」といった賞賛のなか緊張感を失って、
料理のキレをなくしてしまう危険があります。
常連は、行きつけの店、気にいった店を
第三者的に評価できないもの。
その店の批判は
自分自身の批判と受け取ってしまう傾向があるからです。
よって、常連重視の店は、フィードバックがかからず
変な方向へ行ってしまう店も結構見てきました。
また、お年を召された常連客である彼らの会話を漏れ聞くところ、
恐らく昔の「室町和久傳」からの贔屓筋と思えますが、
高台寺の本店ではないディフュージョンである当時の店で、
真の「京料理」を感じていたのでしょうか。

初夏に発売された「東京情緒食堂」では、
この「幸村」の特集がありました。
何でもこの年末、愛弟子の一人が独立、
何を勘違いしたのかハワイへ出店するとか。
そのハワイ店で通用する料理を弟子たちに造らせて
幸村氏が品評する企画でありましたが、
ハワイで京料理に近いものが出せると思っているのか、
食材もまったく難しいでしょうし、
何より客側が真の「京料理」を望んでいないというか、
理解している客が少ないと私は考えます。
幸村氏の口癖は、「料理の落としどころを考えろ」だそうです。
意味合いとしては、
どう食材と調理法、客のニーズをまとめて形にするか、
といった感じで使っているようですが、
店情報データでは「カード使用可」となっていましたから、
カード手数料の問題はうまく「落としどころ」に持っていって
解決したようです。

今回驚いたのは、2番手に位置するであろう弟子が花板として、
鱧の骨切りはじめ盛り付け、
その他重要な仕事をすべて任されているということ。
やはり緊張感がなくなってしまったのか、
幸村氏は焼き場をたまに手伝ったりと
サポート役に徹しているだけでした。
「京味」の西氏のような
プロデューサー的な役割に徹するにはまだ若すぎます。
楽をしたいからなのか、2番手を育てたいからなのか、
理由はわかりませんが、
いずれにしても客側にはメリットのあることではありません。

<明日につづく>