第80回 ソムリエの実力・実態 その9冷やし目のワイン

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  • 2003年8月6日(水)
ワインにはそれぞれ適正温度があるとされています。
赤ワインから白ワイン、シャンパーニュになるにしたがって
提供温度は下げていきます。
そして、それらのワインでも、
熟成感の出ている古酒は温かめに、といった手法が一般的です。

つまり、シャンパーニュなど
10度前後に結構冷やすのが普通ですが、
何十年も経った古いシャンパーニュの場合は、
ほとんど13度前後とかあまり冷やさずに
香りや熟成感を楽しみます。
赤ワインでも、若い「ボジョレー」などは
常温より冷やし目で飲みます。

なぜシャンパーニュの古酒は冷やさないのか。
なぜ、ボジョレーは冷やすのか。
答えは「冷やすと香りや味わいがわかりにくくなり、
ジュース感覚で何でもおいしく感じてしまう」からなのです。

古くなって香りや味わいに複雑性がでてきたワインは、
その特徴を感じ取る為には冷やしすぎてはいけないのです。
折角の複雑性がジュース感覚となって感じ取れないのは、
もったいないことです。
個人によって嗜好が違うので一概に言えませんが、
私は若いワイン(10年未満)はあまり得意ではありません。
複雑性の出ていない若いワインは、
濃く感じるだけで体にきついと思うのですが、
冷やすことによって和らげることができます。
ポテンシャルのない、安いワインも同じ理由で、
冷やし目で飲むと案外何でもいけるものなのです。

店でグラスワインを頼んだとき提供温度をどう感じますか。
ちょっと冷たいな、と思いませんか。
グラスワインに使うワインは、
「ハウスワイン」などと称していますが、
当然安い、ポテンシャルのないワインです。
抜栓も当日ではなく前日、前々日で
へたっているワインかもしれません。
赤ワインでも、ふつうの常温で出したらうまくない、
と感じられるこの手のワインを、
冷やし目でだして味わいをわからなくするのが、
ソムリエの常套手段なのです。