第8回 料理評価本と自分の印象の違いはなぜ?
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- 2003年5月26日(月)
その店を訪問し、「おいおい、違うんじゃない」という
経験をされた方は多くいらっしゃるでしょう。
私も昔からこれらの本を参考にお店探訪をしていましたから、
自分の印象とのギャップをしょっちゅう感じていました。
その疑問がたまりに溜まって、
自分で本を書くようになってしまったのですが。
良く考えてみると、こういった本の編集方針や
料理評論家・フードジャーナリストの取材方法や考え方が
我々一般人とはまったく異なっているから、
ギャップは生まれて当然なのです。
案内本、紹介本はその名の通り、
ただ店のデータを載せているだけです。
他の出版社の同様な本との差別化をしたいために、
新規の店や取り上げられていない店を探し出す努力をしています。
度が過ぎると、とにかく数合わせ的に
片っ端から掲載していく暴走にもなりかねません。
いちいち店の料理を味わって掲載を判断しているわけではなく、
店の外観や内装、料理をヴィジュアルに紹介し、
メニュの一部とシェフの一言、それに住所、電話番号を載せれば
出来上がりです。玉石混交となりますね。
評価本には実名取材と覆面取材があります。
いずれ少しずつ詳しく皆さんと考えて
述べていきたいと思っておりますが、
実名取材は簡単に言ってしまえば
特別料理を試食して評価しています。
実名で料理人に接近して一般人と違う料理を食べている、
もしくは取材を申し込んだら普段と違う料理になった、と
山本益博氏も「東京最高のレストラン」の著者たちも
発言しています。
ですから、読者が店に出向いても
食べることの出来ない「特別料理」の評価を書いた本は
実はまったく無意味なものです。
その料理が出てこないのですから。
何処で、おいしい料理を食べたという
「自慢話」として読むのなら構いませんが。
本当の覆面取材は一般人にまぎれて食べていますから、
読者と同じレベルの料理を対象に評価しています。
評価人の嗜好の違いや年齢による評価基準の読者との不一致、
評価人の食べこみ経験の多い少ないでのバラつきなど
それはそれで問題があります。
読者としてすべて信じることなく
修正をかけながら判断していくことが大事でしょう。