第683回 一口に鮨(寿司)と言っても
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- 2005年6月23日(木)
「スシ」というもののつかみ所がないとうか、
同じスシといっても千差万別であることがわかってきました。
私は意識的に「鮨屋」と「寿司屋」を使い分けているつもりです。
本当の定義はどうだか知りませんが、
江戸前に拘っている店を「鮨」、
新鮮ネタ志向や出前もする街場店、回転系を
「寿司」と区別しています。
唯一の例外は「小笹寿し」でしょう。
この店の場合、自分で「鮨」の字を使っていません。
スシは価格帯の違う店や、
店の形態の違いによる「鮨と寿司」でまったく別物だと思います。
大きく分けて3つ、
回転スシ、街場スシ、高額スシに分けられるでしょうか。
回転スシはいまさら説明するまでも無く、
ただ魚の切り身が米粒の塊に乗っかっているだけのもの。
街場スシとは、主に住宅地にある出前もするスシ屋でありまして、
コテコテ江戸前ではなく、
煮切りを塗らない、養殖、天然、産地に拘らない、
客単価が高くても1万円前後の店であります。
住宅街といっても、「アラ輝」や昔の「さわ田」は例外です。
高額スシ屋はまた大きく分けて2つに分類されるでしょうか。
札幌の有名店「すし善」などを代表に、
タネは新鮮さをウリにし、〆や煮物にはあまり拘らない、
煮切りも注文しなければ塗らず、
酢飯も軽い握りを出す店、新鮮タネ志向寿司屋です。
昔の接待ではこのような店が主体だったはずで、
今は主流になっている「お任せ」ではなく、
「お好み」で高いタネを頼んでもらうことを狙っているため、
手間の割に値を上げられない
〆物や干瓢などに力を入れない店でもあります。
玉子も出汁巻きしかないでしょう。
賛否両論ある鮪の拘りで有名な奥沢の「入船」もこのジャンルです。
そして最近のオタクをはじめスシ通に支持されている
もう一つの高額スシが、高額江戸前鮨屋、
いわゆる一仕事したものが主体の
拘りタネとしっかりした酢飯を使った店であります。
どちらもお酒を飲んでツマミもちょっと頼むと、
1万5千円から3万円くらいまで、
なかには「すきやばし次郎」や「銀座 さわ田」のように、
フルで食べると4万円近くになる店まで出てきています。
私は仕事柄(というか副業である飲食店コラムのネタのため)、
回転すし、街場寿司、新鮮タネ寿司など
江戸前鮨以外のスシを食べるようになりましたが、
本来「スシ」と一つにくくられる食べ物だというのに、
これらはまったく別物だとあらためて感じるようになりました。
これらジャンルの異なる「スシ屋」を
同列で評価、点数づけする物ではないと。
極端にいうと、
デパ地下の惣菜料理と高級料亭、
洋食屋のエビフライと高額フレンチ、
学生食堂のナポリタンとリストランテの料理くらいの
開きがあると考えます。CPでの比較対照が困難なのです。
回転スシの10倍うまいかどうか、高額江戸前鮨。
しかし、両方を食べこんだ人は、
回転を10回行くより江戸前に1回訪問を選ぶのではないでしょうか。
3回の街場寿司訪問と1回の江戸前鮨は
人それぞれの価値観の違いで意見は異なるでしょう。
まして、同じ価格帯である新鮮タネ寿司と江戸前鮨では、
まっ二つに意見が分かれるかもしれません。
現に私の周りの仲間でも、新鮮タネ系を好む人がいるからです。
食べ続くることによって、
どのようなスシが自分の好みになるのか。
新鮮ネタ系かコテコテ江戸前鮨かなのか。
それは人それぞれの価値観といっては大げさかもしれませんが、
意見は分かれることと思います。
まずは、色々なジャンルのスシ屋を食べまわって
自分の感じ方、食後感をよく記憶していくことだと思います。
そうして場数を踏んでいけば、
各ジャンルのそれぞれのスシの味わい方がわかるはずです。
色々な店を経験すれば、今はチェーン店となってしまった、
あの人気店「美登利寿司」で、
長蛇の行列に並んでまで食べたいとは思わなくなるはずです。
あの価格、あのタネ質、あの変な握り、
代替できる街場寿司は他にいくらでもあるからです。