第676回 同じ伊勢丹系列でも飲食店への集客力に雲泥の差

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  • 2005年6月16日(木)
最近新宿の伊勢丹へ出かけることが多いのですが、
家族連れの客には昼時は大変なはずです。
最上階はこの手のデパートのお約束というか、
飲食店街が集中しているのですが、
どんな店でも行列が出来ていて入店するのが大変です。
昔入って懲りた「分とく山」も昼としては3千円近くからしかなく、
あの料理にしては高めですがそれでも人気。
街場のレベルである鮨屋も、
お好み、お任せ専門のカウンターでさえ順番待ちで、
テーブル席は行列で溢れています。
高すぎる洋食屋、
路面の店舗ならこれだけ客が入るかどうか疑問のアスター、
伊勢丹経営と思われるいわゆる「デパ食」まで
すべてが混んでいるのです。

食品や衣類、装飾品などの品揃えが
他の店舗より充実しているからでしょうか、
売り場も日本橋近辺の老舗より人で溢れているように感じます。
よって飲食店街で行列している客は、
伊勢丹新宿店へ買い物に来た人がほとんどだと想像します。
つまり、伊勢丹の集客力が
そのまま飲食店営業に貢献しているということ。
各飲食店のCPの悪さをみると
かなりのテナント料を取られていると推測されますが、
それでも旨みある経営を保障されているわけです。

反面このコラムでも御馴染みの「交詢ビル」。
このビルのテナントの主体は「バーニーズ」です。
しかし、4階、5階の飲食店フロアだけでなく、
バーニーズ自体もあまり活気を感じない客入りです。
何十回と土日を含めて行きましたが、
駐車場が満車であるところも見た事がありません。
セレクトショップという位置づけの「バーニーズ」。
その営業形態から取扱商品や価格が限定され、
百貨店とそのまま集客力を比べるのは無理があるでしょうが、
両店は同じ伊勢丹グループであります。
元来、ごった返すほどの客を想定していない
セレクトショップをメインにしたビルに、
売り場が3フロアに対して2フロア用意して
数多くの飲食店を誘致しようと計画した
コンセプト自体に無理があったと考えます。
シャネルビルにはデュカスの店が1店だからいいのです。
換言すれば、交詢ビルは、あのシャネルビルに、
四川料理やトンカツ屋、蕎麦を出す和食屋、串揚げ屋、
創作フレンチ、天麩羅屋、韓国料理など
多種にわたる飲食店を無謀に出店するようなものです。
いくらシャネルが人気だからといって、
シャネル目当てで入る客が、色々な飲食店に入るかどうか、
シャネルをまとったご婦人がトンカツを食べるのか。
デヴェロッパーは、主体のテナントの客層に合った飲食店を、
集客数にあわせた店舗数で計画するのが基本と考えます。
ビルさえ造れば、いくらでも飲食店に客はやってくる、
といった安易な考えはもう通用しないはずです。

今でも「六覺燈」の主人が言っていた言葉を思い出します。
「バーニーズへ来る客が食べにくるのではなく、
うちに食べに来た客がバーニーズの客になっているんだ」