第61回 料理人の人脈自慢は必要か

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  • 2003年7月18日(金)
その道で成功し注目を浴びるようになると、
付き合いの範囲が広がってきます。
今まで知らなかった業界や考え方をもった人たちとの接触は、
ある面では新鮮味があり刺激にもなります。
良い意味で、自分をステップアップさせられる
チャンスでもあります。
料理人の場合は、人気が出てくると色々な業界の人が
常連客となって押し寄せてきます。
向うから寄ってきますからその社交範囲の広がりは早いはずです。
でも、反面デメリットもあるのではないでしょうか。

交際範囲の広さを見せる場所としては両極端ですが、
結婚披露宴や告別式がありますね。
招待客、弔問客の多さ、有名人、業界人出没度の高さなどなど。
それに加えて、お店の場合にはもう一つ
一般に示せる機会があります。
新装開店、分店の開店などの際のお祝いの花などの多さです。

六本木ヒルズでは一部の飲食店を除いて、一斉に開店しました。
当初はすべての店に客が殺到してしまい、
その混雑さが目立っていました。
その中で私は2店ほど、
ちょっと変わったことをしていたのを発見したのです。
自己顕示欲の強い料理人もしくは経営者なのでしょう。
「ザ キッチン サルヴァトーレ」と
「ル ショコラ ドゥ アッシュ」には店の窓ガラスや外壁に、
なにやら文字の書かれた紙や木のプレートを
無数に張り出していたのです。
良く見ると、タレント、スポーツ選手、コメンテーター、歌手など
いわゆる「業界人」の名が1枚1枚に書かれています。
面白いことに、この2店では
相当数の業界人の名がダブっていたと記憶しています。
今までの店の常連客、もしくは経営者、
料理人と懇意にしているという意味合いで祝いを送った人の名を、
店が張り出していたのでしょう。わかりやすい人たちです。
本当は所属の事務所に名前を使う許可を得ただけかもしれません。
特にクオモ兄弟は完全に雇われですから、
この人脈はスポンサーの関係であることが想像できます。

でも、野球選手や歌手からいわゆるタレントに至る
シェフやオーナーの派手な交際は、
職人としての地道な努力や精進とは相反する印象を
人に与えてしまいいます。
厨房や職場にでないで人任せにしているのではないかと
疑問を持たれる危険があります。
舞い上がっていると勘違いされますし、
タレントの溜まり場のような店を敬遠する人が多いのも事実です。
一部の人には効果ある宣伝、ハッタリではありますが、
料理人やオーナーの自己顕示欲を満たすだけで、
店にとってはあまり効果的なものではないと思うのです。

六本木ヒルズの公式ガイドブックで、
何件か料理人の写真がでている店があります。
タレントとの交際には必要でも、
パティシエとしては必要と思われない派手な金髪。
似合うかどうかは神のみぞ知る、ですが
「アッシュ」の辻口氏も写真入りで
出ているのは言うまでもありません。
あの広い豪華な造りの店構え、
バックに資金提供者がいるのではと思うのは私だけでしょうか。